▼れいん・れいん(火黒) そこはかとなくR-15につき注意 突然降られた雨に慌てて2人、駆け出した。 適当に雨を凌げる場所を見つけて、ぐいと火神は隣を走る黒子の腕を引く。 逃げ込んだ駄菓子屋っぽい古い店の軒先は、店が閉まっていることもあって静かだった。 バケツをひっくり返したかのような豪雨が2人を閉じ込める。 「ゲリラ豪雨ってやつですか?」 「ったく勘弁してくれよな…」 カッターシャツがぐしょぐしょだ。 鞄から取り出したくしゃくしゃのタオルで顔を拭う。 空の様子を伺おうと試みるもあまりに雨が激しくて見えなかった。 「止む気配ねーな…」 仕方ない、とため息を吐いて火神はシャツを脱いでタンクトップになった。 「黒子、おまえも上一枚脱げよ」 ふと隣を見下ろせば、黒子の水色の髪から水滴が滴っていて驚く。 「おまっ、頭拭けよ!体冷やすぞ!」 「そうしたいんですが、タオルをロッカーに忘れてしまって…」 「早く言えバカ!」 自分が使ってしまって濡れているし汗臭いだろうが、無いよりましだ、と黒子の頭をわしわしと乱暴に拭く。 痛いです火神くん自分でやります!との声が聞こえたが無視だ。 「っとに、風邪ひいたらどうすんだおまえは」 「すみません…」 タオルの隙間から、申し訳なさそうに上目使いでこちらをうかがってくる黒子の前髪から水滴が一滴伝って、落ちた。 ハッとなって手を離す。 濡れたシャツが細い身体にまとわりついていて、 長い襟足がぺたりとうなじに張り付いている。 白い肌は冷たい雨に打たれて冷えたのか透き通るようで、乱暴にぬぐったせいで頬は朱をさしていて… 慌てて目をそらした。 どくん、 心臓が跳ねて、疼く。 「…ともかく、シャツ脱げよ。濡れたもの身に付けてると余計冷えるぞ」 「…はい」 しゅるり、衣擦れの音が鼓膜を揺すって、不覚にも肩が揺れた。 隣を見てはいけない。 本能がそんな警告を出すものだから、必死に空を睨んだ。 黒子は忠告に忠実にシャツを脱ぎ、おとなしくしている。 止まないですね…とぽつりと呟く声が聞こえた。 滝のような雨の中2人。 梅雨に突入しそうなこの季節、衣替えをしたとはいえ気温の移り変わりは激しい。 雨に打たれた身体は水滴をぬぐっていても、ひんやりした空気に晒されて体温が下がっていく。 雨の音と自分の心臓の音、それしか聞こえない静かな世界で、火神はひっそりと、隣にいる黒子の気配を感じていた。 普段、自分より体温が低く寒がりな黒子のことだ。風邪をひきやしないか… そう思った矢先、ぴたりと冷たいものがむき出しの二の腕に触れて飛び上がる。 「あ、すみません…ちょっと、寒くて」 Tシャツになった黒子が寄り添ってきたようなのだが、その肌の冷たいこと。 見下ろした顔は青白く、よく見れば体は小刻みに震えている。 離れていこうとしたその体を、指を絡めることでひき止める。 驚いたように見上げてきた黒子の瞳に映る自分を心の中で嘲笑う。 だから隣を見るなって言ったのに。 どくり、と疼く心臓と、熱。 よくわからないものが身体の奥から沸き上がる。 「…黒子、俺の家まであと少しだ。濡れるけどここよりあったかい。…走るか?」 口実を作ってしまう自分はなんて卑怯なんだろうと思う。 ぴくん、と細い肩が震えて、俯いた黒子は何を思っているのだろう。 なけなしの良心が痛んだが、こくりと頷いた黒子を見て性懲りもなく熱が疼くのだ。 「ゃ…か、がみ…く…っ」 玄関から上がるやいなや灯りもつけずに黒子を捕まえてキスをした。 我ながらがっついてると思う。 びしょびしょに濡れた髪や服から水が滴って床を濡らすが構うものか。 驚くほど冷たい唇を食んで、冷たい身体を抱き締める。 とんとんと背を叩かれて、名残惜しく離す頃には透き通るような頬が紅色に染まっていてこくりと喉が鳴った。 「まってくださ…い…床…」 「後で拭くからいい」 「寒いんですけど…」 「すぐあったまる」 「…じゃあ、服」 「?」 「…濡れたままだと風邪をひくんですよね?」 脱がせてください、と。 震える声で誘う黒子にくらりとする。 ぐっしょり濡れて変色したTシャツに手をかけて、一気に剥ぎ取る。 片手で黒子のベルトを外し、もう一方の手で自分のタンクトップを脱いだ。 チャリ、とペンダントが鳴る。 露になった肌同士を触れあわせれば、安心したように黒子が息を吐いた。 「…火神くんあったかいです」 「…そーかよ」 するり。 脇腹を撫で上げれば甘い吐息が漏れる。 「…黒子」 シていいか?と問いかければ、シたかったんでしょう?と返される。 「バレてたか」 「あれだけ熱のこもった瞳で見つめられれば」 「で、返事は?」 「…僕はここまでついてきたでしょう?」 温めてくれないんですか?と。 背伸びをして首に腕を絡め、首を傾げた黒子が覗き込んでくる。 もう色んなものが限界を越えた。 抱えあげた小さな身体。 仄かに灯り始めた熱を感じながら深く深く口付ける。 ベッドに下ろせば期待に満ちた瞳が見上げてきて、欲望に暗く燃える自分の目が映り込む。 雨音が満ちた部屋の中、 薄暗い世界で2人、 まるで取り残されたかのようで。 どちらともなく笑って、キスをした。 こんな雨も、悪くない。 れいん・れいん (sssから引っ張り続けた火黒雨宿りネタ。かがみん一人暮らし設定がおいしすぎる) |