Zero(何もない)

火黒




何もなかったんです、僕は」
「?」
「存在感も薄ければ、存在意義も失ってしまいました」

唐突に語り出した黒子に火神は面食らうが、彼が自分の中学時代の話をしているのだと気づくと深くため息を吐いた。

「…おまえは…っとにバカだなぁ」
「…失礼ですね」
「何もない奴があんなに強い瞳で人のことまっすぐ見つめてくるかっての」
「!?」

ぎゅうと火神は黒子を抱き締めた。
おまえはここにいると、安心させるように。
何もないことなんて、ないんだと。

「俺はあの瞳を見たからおまえを好きになったんだ」

ぎゅうと抱き返される力に微笑みながら、より一層火神は儚い存在を抱き締めるのだ。






Zero
(黒子にちょっと不安定になってもらいました)







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