銀色月灯り

相変わらずの福蒼です。
今回は甘いです!!
うちの福田さんはキザったらしいです!!


さてさて、弓月はこれから四日間旅にでます…
海外なのでパケ放題が使えないので(涙)
しばらく更新お休みします、すみません(>_<)

ではでは福蒼をどうぞ↓









銀色月灯り



夜の公園のひんやりした空気が、体をさすのが心地よい。
暖かすぎる店内から出て、少し歩くかと言った彼の提案に反対する理由もなかったのでおとなしくついてきた。
私たち以外には、人影はない。
冴えた空気に月明かりが綺麗な夜だった。
植え込み沿いにのんびり、肩を並べて歩く。
会話はない。
それでも確かに隣に存在を感じられる距離。

「福田さんでも感傷的になったりするんですね」
「あ?なんで?」

見上げた彼の銀髪は、ちょうど月を背にして光を透かして輝いて見えた。
それと引き換えに、逆光になっているから表情がよく見えなかったけど。

「だってこんな時間に散歩がしたいなんて。何か物思いにふけっていらしたんじゃないですか?」

辺りは静かで自分たちが歩く音しかしない。
考え事をするにはちょうどよい、夜だった。

「そんなんじゃねーよ」

心なしか、いつもより彼の声が1トーン低くて、どきりとする。
おもむろに立ち止まった福田さんにあわせて、止まる。
見つめてくる瞳が心なしか熱くて、頬が染まるような気がした。
でも目がそらせない。
そらしたら、何かが終わってしまう、そんな気がして。

「…福田さん?」

どきどきしながら声にした彼の名は震えて聞こえはしなかっただろうか。
どれくらい、そうして見つめあっていただろう、ふいに彼の髪が、揺れる。

「っ!」

音もなく近づいてきた福田さんに反射的に目をつむればすぐ耳元で囁き声。
緊張で強張った体が吐息で揺れる。

「蒼樹嬢ともう少し一緒にいたかった」
「え!?」
「なぁんてな」

ぴしっ!
額に軽い衝撃が走って驚いて目を開けると、もう数歩離れたところで笑って立っていた。

「〜〜っ福田さん!!」

からかわないでください!
色んな意味で恥ずかしくて彼のところに詰め寄る。
わりぃわりぃ、なんて欠片も謝るつもりのない謝罪の言葉を述べてひらりと身を返す、その背中をぽかぽか叩いた。

「もうっ!冗談がすぎますよっ」
「だから悪かったって」
「もう遅いですっ」
「いてっ!おま、結構本気だろっ」
「きゃっ!?」

ぽかぽかぽかぽか、叩いていた腕を福田さんが掴んで引っ張った。
どんっと彼の背中に正面衝突。
一瞬何がなんだかわからなかったが、まるで後ろから抱きついているかのような体勢に、心臓が跳ねる。

「ふっ、福田さん!ごめんなさい、もうしませんからっ」

離して。
そうじゃないとこの鼓動が伝わってしまいそう。
それぐらい、距離が近くて。

「ん?…嫌っていったら?」

今日の彼はどこかおかしい。
お酒ははいっていないはずなのに。
こんなこと、ただの悪ふざけだったら悲しすぎる。
でも密着した彼の背中がとても気持ち良くて、もう少しこうしていたいという気持ちがうまれて抵抗する力が止まってしまった。

「…なんで嫌がらねぇんだよ」
「…え?」

低く呻くような声が、振動と共に鼓膜に伝わる。
より一層、強く引き寄せられて、腕が彼の腰に回すようにして固定されてしまった。

「さっき、目つむったよな」
「…はい?」
「俺が顔、近づけたとき」
「…」
「キスすると思った?」

男の人にこれだけ密着するのは初めてで、
しかもそれが…まがりなりにも好きな人、で。
ただでさえ胸が苦しいのに、キス、なんて単語。
しかも図星なもので簡単に体が跳ねる。
動揺がきっと彼に伝わっている。

「…今日の福田さん、変です…意地悪です…」

好きな人なのだ、キス、して欲しいに決まってる。
期待してしまう。
こんなふうにされたら、もしかしたら福田さんも私のこと…なんて。

「…なぁ」

くるり、と私の腕の中で福田さんが回転する。
私の目の前には彼の背中から胸にかわって、見上げた先には最初に見つめあったときと同じ、真摯で熱い眼差しが。

「キス」

ふわりと触れられた頬、
月の明かりを透かして彼の髪が銀色に光る。

「……していい?」

縫い止められたように動けない。
呼吸がとまりそう、気づけば拘束は外れているのに腕は彼の腰に回したまま。

「……福田さんが」

彼の腕が私の腰に回る。
どきどきして止まりそうな私の呼吸、震える声を叱咤して、飛び出しそうになる心臓を飲み込んで、

背中を押してくれるのは貴方の強い眼差し。



「私が貴方を好きなように、私のことを好きでいてくださるなら」



頬を撫でていた指が、ぴくりと固まった。
月の明かりの逆光で、彼の表情はよく見えなかったけど…
揺れた髪、動いた空気、近づく吐息、今度こそ、ゆっくりと目を閉じる。

唇に触れた思ったより柔らかな感触。
生まれて初めてのキスは月の灯りのようにとても軽やかで優しいものだった。







思いが通じた二人です!






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