バイクに乗ったサンタクロース

*福蒼







ちらちらと雪が降ってきた。
全ての景色が飛ぶような速さで流れていく。
ブラインド越しのワントーン暗くなった世界がなんとなく異世界のような気がした。
吹き付ける風を切るように進む背中にぴたりと張り付くと嘘みたいに温かかった。
守られている、そんな感じがして、福田さんの後ろに乗せてもらうのは、大好きだった。
目的地は私の家。
もうすぐ着いてしまう、この時間が終わってしまう。
それはとても名残惜しい感じがした。


「着いたぜ、蒼樹嬢」


バイクのエンジンが切れるとあたりは静寂に包まれる。
しんしんと降る雪で福田さんの銀髪が濡れていた。
背中から離れると途端に心細くて寒くてたまらなくなる。
すがるような目で彼を見上げれば、なんだよ、と額を小突かれた。


「福田さん」
「ん?」
「今日は、泊まっていってください」


きゅうと上着の裾を握った。
ちゃんとご馳走もケーキも用意してあります。お風呂もすぐに沸かします。
だから、今日はずっと一緒にいてほしい。


「…あーー…」


彼はがしがしと頭を掻いたあと、寒さで赤くなった鼻と同じくらいに頬を染めて、言われなくても泊まってやるよ、と呟いた。
嬉しくて嬉しくて、はい!といつもより大きな声が出てしまったけど気にしない。

だって今日は、福田さんとお付き合いするようになって初めてのクリスマスだから。


「ホワイトクリスマスだな」
「はい」
「…蒼樹嬢」
「なんですか?」
「やる」


手を取られて、握らされたのは小さな箱。
びっくりしたのも束の間、渡された箱ごと手を包み込まれて福田さんに引っ張られるようにして歩き出した。


「ちょっ、福田さん!これじゃプレゼントの中が見れません!」
「じゃあ手、離すか?」
「…それも嫌です」


正直に言えばははっ、と笑われた。
部屋についてからのお楽しみだ、なんて笑う福田さんが心底楽しそうで。


「…もう、仕方ないですね」


繋いだ手から全身に熱が伝わる。
これから部屋で、二人きりで聖なる夜を祝うのだ。
それが嬉しくて、引かれる手はそのままに、少し足を早めて広い背中にこつりと額をぶつける。
好きです。
想いが伝わったのか、バーカ、と彼が囁いた。

福田さんからの初めてのクリスマスプレゼントの中身は、秘密です。








(夜勤休憩中です!みなさんメリークリスマス!!)








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