生誕ラヴァーズ



一万打企画第7段!
そしてラストになります。
遅くなって本当に本当に申し訳ないです(>_<)
たくさんのリクエストをいただいて、華々しく一万打を迎えることができました。
みなさん本当にありがとうございます。
これからもどうか『つきくま』をよろしくお願い致します。


ではでは一万打企画最後を飾りますのは薫子様リクエストの「福田さんの蒼樹嬢への告白話」です。
楽しんでいただけたら幸いです↓














そのとき、
世界は綺麗でした。







生誕ラヴァーズ








久しぶりに福田組の集まりがあって、いつもより話が盛り上がって、
帰りが遅くなってしまった。
福田さんはお酒が入るから、と今日はバイクを置いてきたそうで。
少し涼しくなってきた夜道を二人で歩く。
送ってやる、と申し出てくれたのは福田さん。
お願いします、と答えたのは私。
胸が高鳴ったのは、秘密。


「夏も終わるな」
「そうですね」


会話は少なく、福田さんはポケットに両手を突っ込んで少しだけ前を歩いている。
等間隔に並んだ外灯が彼の銀髪を照らす。
無愛想に見える態度もまったく気にならなかった。
ちゃんと歩く早さを調整してくれていることも、こちらの様子を気にかけてくれていることも、知っている。
だって自分たちの間の距離はさっきからずっと一定で、福田さんは車道側を歩いてくれている。
気づかれないように微笑んだ。
頬がちょっと熱くて気分がとてもいいのは、程よく入ったお酒のせいだけではない。
今の自分にとってはこの二人きりの、会話がなくても満たされたような時間が何より大切で、
彼の手がポケットに隠されてしまっていることが少しだけ切ない。
その手を自ら絡める勇気などないのに。
いつか、手を繋いで歩けたらと願っている。
いつのまにか、こんなにも彼のことが好きになっている。
もう一度、気づかれないように微笑んだ。
今度は少し、淋しさを滲ませて。


「…なぁ、蒼樹嬢」


そんなタイミングで話しかけられて思わず足が止まってしまった。
つられるように福田さんも足を止める。
少し奇妙な沈黙が落ちて、どきりと胸が高鳴った。


「…はい」
「蒼樹嬢ってさ」



中井さんのこと、好きなのか?





ピシリと何かにヒビが入った音がした。
どうして?
どうしてそんなこと、聞くの?
あなたが。
元気にやってんのかな、なんて貴方はなんでもないように言葉を紡ぐ。


「…どうして、そんなこと」


掠れた声が出た。
絶望に似た気持ちが全身から溢れだし、少し前にある福田さんの背中が霞む。
すべての外灯の明かりが消えたみたいだった。
まさか、福田さんがそんなことを言うなんて、福田さんがそんなふうに思っていただなんて知らなくて。
知りたくなかった。


「さっきちょっと話題に出たからな、中井さん」


思い出しただけだ、って。
無邪気に私の心を切り裂いた。
違う違う。
私は、貴方が、


「蒼樹嬢、絶対好きだっただろ。漫画にでてるもんな」


笑って貴方は振り向いた。
私の気持ちも知らないで。
それがどれほど今の私を傷つけているか気づかずに。
視界が絶望に滲んで、貴方の顔が見えない。


「…違います」


絞り出すように、でもはっきりと伝えた声はやはり掠れていた。
握りしめたワンピースの裾。
悲しくて悔しくて。
好きな人に好意に気づいてもらえていなかったことがこんなにも、
こんなにも哀しいなんて知らなかった。
知りたくなかった。


「私は……。私が好きなのは、中井さんじゃ、なくて……」


俯いた先にぽとん、と黒い染みができた。
泣いてる。
最低だ。
唇を噛み締めて、走り去ろうとした。
もうこれ以上ここにいられない。
そう思って駆け出したのに、


「っ!離してください!!」


強い力に手首を捕えられた。
押しても引いてもびくともしない、体温を伝える大きな掌に胸が熱くなる。
それでも逃れようと身を捩れば、蒼樹嬢!と鋭く叫ばれて腕を引かれた。


「っな、にを…っ離してくださいっ」
「嫌だ」
「離して!」
「落ち着け!」


大きな声にびくりと体が震えた。
それに気づいて一瞬福田さんも怯んだように力が抜けたが、すぐに両腕が背中に回される。
悪い、と一言詫びられて、抱き締められている今の状況についていけなくて、混乱する。
泣くな、と言われても、抱き締められても哀しい気持ちは収まらなかった。


「…やめてください福田さん、こんな」
「……」
「福田さん、どうして」
「妬いただけだ」


ぽつん、と投げ掛けられた言葉に思考が止まる。
福田さんから離れようと胸を押していた腕が、静止する。


「…え?」


俺が、中井さんに、みっともなく妬いただけだ。
俺が臆病で情けないだけなんだ、と。
繰り返す福田さんの肩越しに外灯に照らされた街路樹を見上げる。
高鳴る鼓動に耳を傾けながら、どうしてと、問いかける。



「…俺は、蒼樹嬢が、好きだ」



一言一言、はっきりと、言い聞かすように紡がれた、言葉。
ゆっくりと胸の中で反芻する。
視界が、先程とは違うもので霞んでいく。
泣くなって言ってるだろ、と。
耳元で甘く言われて、ぎゅうと彼の背中に回した腕に力を込めた。



「私も、好きです。福田さんが、貴方が」



切れ切れになりながらも、一生懸命に伝えると、力強い腕がより強く抱き締めてくれた。
好きだ、と。
もう一度耳元で言われて頬に口づけられる。


福田さんの肩越しに見上げた外灯が涙で滲んで虹色に見えた。
想いが伝わったその瞬間、
世界は、

今までで一番、綺麗で美しく見えました。











大変遅くなりました薫子様(>_<)
告白、しかも福田さんから、ということで、初心に返って書かせていただけました。
とても楽しく書くことができました!
気に入っていただけたら幸いです(*^_^*)
リクエストありがとうございました◎







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