看待ラヴァーズ



一万打企画第6段!
遅くなって申し訳ないです!!(>_<)












気力もないのに、飛び上がるんじゃないかと思うくらい驚いた。
安岡だと思って人の気配に目を開けたのに、そこに蒼樹嬢がいたからだ。





看待ラヴァーズ





何も言えずに固まっている俺を、蒼樹嬢もまた何も言わずにじっと見つめていた。
ヒュウと喉が鳴る。
咳き込みそうになったのを堪えて咳払いをすると、目の前の細い肩がぴくりと震えた。
熱で靄がかかる頭では何故彼女がここにいるのかがわからない。
何かを言いたげな大きな瞳に見つめられて、居心地が悪くて身じろぎした。
ぎしりと関節が痛む。
あー、これは一眠りする前より熱があがったな、と冷静に思った。

「……」

きし、と蒼樹嬢が座っていた俺の仕事部屋の安い椅子が鳴った。
何かが額から剥がされて、すぐにぴと、と冷たいものが貼り付けられる。
手をやって確かめるとあの貼るだけで頭を冷やしてくれる奴だった。
ふわりと蒼樹嬢の匂いが近くなったかと思えば、くいと頭を持ち上げられて、首の下に氷枕が差し込まれる。
ひんやりして気持ちいい。
同時に、好きな匂いがすぐ近くにあることに不覚にも安心した。

「……蒼、樹嬢?」

一向に人の頭を抱えて離そうとしない彼女を不思議に思って問いかける。
熱で喘ぐように出した声はひどく掠れていて、声を出したことを後悔した。
そもそも不思議といえば、何故彼女が今ここにいるのか、それこそが謎だ。
自分が倒れたことを知っているのはアフロな担当と安岡だけなのに。

「…っバカ!」

ふいに腕に力がこもって、蒼樹嬢の胸に抱き寄せられた。
驚きに見開いた目に、彼女の肩越しに掛け時計が飛び込んでくる。
最後に見た時間から十時間、経過していた。
バカです、福田さんのバカ…、と繰り返す声も体も震えている。

「…安岡さんから、倒れたって連絡、いただいて…」
「…ん」
「びっくりして飛んできたら、全然、目を覚まさなくて…」
「…」
「気持ちはわかります。でも体を壊したら、何もできなくなってしまうんですよ?」

ぎゅうと強く抱き締められて、彼女の声が胸に突き刺さって、苦しかった。

しばらく前から感じていた体調不良。しかしいつもの軽い風邪だと思っていたのだ。
それがこのざま、だ。
固く口止めしたはずだったがどうやらうちの優秀なアシスタントは従うべき相手をよくご存知らしい。

きっと蒼樹嬢の頭には真城くんのことが過ったのだろう。
自分自身も彼から学ばせてもらったはずなのに。
不甲斐なさに何も言えなくなる。
あまりに自分が大人しくしていたからだろうか、徐々に蒼樹嬢の動揺も治まってきたようで体の震えもなくなった。
ゆっくりと、頭を降ろされる。
氷の冷たさが心地よい。
ほぉと息を吐いたのも束の間、ふわりと頬を包むように手を添えられて、蒼樹嬢が目を覗き込んできた。

「…もう、こんなことしないでください。約束ですよ?」

意志の強い真っ直ぐな瞳。
それを見つめ返しながら、頷いた。
悪かった…、と。
先ほどよりもまだましな声が出せたと思う。
そんなことに安心する俺を見透かしたように、くすりと蒼樹嬢が笑った。
今日初めて彼女が笑顔になった。

「あ、あとこれからは私にも連絡してくださいね!これくらい、頼ってください。隠したら怒りますよ」
「…りょーかい」

返事をしたら、彼女はこつんと額同士を密着させて、その状態で微笑んだ。
一瞬で離れてしまったけれど、その笑顔がすごく可愛くて綺麗で、ドキリとする。

「さて、と。福田さん何も食べていらっしゃらないですよね?今消化のよいものを作りますね。お薬も飲まないといけないし…」
「…蒼樹嬢」
「?なんですか??」

腕捲りして気合いを入れ始めた彼女に、ご飯よりキスがいいです、なんて正直なことを言ってみる。
虚をつかれたような顔をした蒼樹嬢は、何かを考えるように両腕を腰にあて、そして満面の笑みで答えたのだ。

「治るまでおあずけ、です」

これはもう死ぬ気で治すしかねーな…てかもう二度と倒れるとかバカな真似はしねー、とか。
キッチンへ消えていく彼女の背中を見送りながらため息を吐いたのだった。











さりな様リクエストの「体調悪いのに無理して倒れた福田さんを看病する蒼樹さん」です。
好きなシチュエーションベスト5に入るくらいのものだったので非常に楽しかったのですが少し福田さんを弱らせすぎてしまった気が…(汗)
まあこれがうちの蒼樹さんと福田さんの力関係です。すみません!!
リクエストありがとうございました◎







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