純白ラヴァーズ



一万打企画第五段!
またまた福蒼です!
更新遅くてすみません(汗)













今年のその日は、特別な意味を持った。





純白ラヴァーズ






明滅する明かりをぼんやりと見ながら蒼樹は手袋をはめた手を擦りあわせた。
吐く吐息が白い。
座っているベンチごと冷気に飲み込まれてしまいそうで、体を小さくして震える。
いつもの街が、夜というだけで雰囲気が変わるのに。
今日という日は、更に格別だ。
何処かから響いてくる耳に残る曲。
きらびやかな街路樹。
街行く人々の熱気。
それらが自分のいる場所から遠くにある気がして、少し寂しかった。
振り払うように開いた携帯電話にはメール画面が開かれている。
差し出し人は、彼。
自分がずっと、待っている人。

「…遅いです」

むぅ、と画面を見ながら、むくれた。
『12月24日19時に、××前で』
そんな有無を言わさぬ簡潔なメールに、自分がどれほど喜んだことだろう。
今の時間は19時15分。
少し不安になってきた。
しかし彼に限って、約束をすっぽかすなんてことはないはずだ。
信じて、携帯を閉じて空を見上げる。
コンクリートジャングルの灯りが今日程美しく見えたことはない。
雲に覆われた空が地上の灯りを反射しているのかぼんやりと明るかった。
降らないかな、でも降ったらもっと寒いな…
なんて、考えながら息を吐く。
ふわり、広がった白い吐息。
ふいにそれを切るように目の前を何かがよぎった。

「!」

きらりと煌めいた何かはすぐに視界から消えた。
すぐ後ろに人の気配。
驚いていると首に腕がまわって。

「…悪い、なかなか決まらなくて」

と彼の声。
後ろから抱き締められている、その事実を認識するやいなや体温が急上昇した。
ぎゅうと、抱き寄せられて背中が温かくなる。

「…福田さん?」
「おう」
「決まらなかったって、何が…」
「ん?」

これ、と。
福田の腕が離れ、その指が蒼樹の鎖骨の辺りからひょいと何かをつまみ上げた。
その『何か』は先ほど視界で煌めいた『何か』、で。
それはシンプルで綺麗なネックレス、で。

「福田さん…これ…」
「…クリスマスだろ?」

似合ってよかった、と。
微笑んでいるのが伝わる声。
全てを理解して涙がでるかと思った。

「福田さん…やることが気障です」
「いってくれるじゃねーか」

誤魔化すための憎まれ口も彼には通用しない。
だって自分の声は震えてる。
振り返って見上げた彼の瞳は驚くほど真剣で、自分も負けじとその目を見つめ返した。

「…大事にします」

この想いが正しく彼に伝わるように。


福田の背後にあった大きなツリーの灯りが、突然消えた。
暗くなったその瞬間に重なり、すぐに離れた熱。
それが唇だと気づくのと周りが歓声をあげるのが同時で。
その場にいる人間が全てツリーを見上げているのに福田だけは背後に見向きもせず。
一際明るくなったイルミネーションの灯りに照らされて、頬を朱に染め瞳から一筋涙を流す蒼樹をじっと見つめていた。


今年のクリスマスは、初めて恋人と過ごした特別なクリスマス。
涙で煌めく灯りの向こうで、雪が降り始めた。
あぁ、ホワイトクリスマスになった…
なんて。
福田に抱きつきながら蒼樹の胸は幸せに満ちて、寒さも忘れて2人、抱き合った夜。











ぁゃ様リクエストの「クリスマスな福蒼」です。
最近の煮えるような暑さの中クリスマスの雰囲気を妄想できず難産でした(汗)
遅くなってしまってすみません!
前々から思っていましたがうちの福田さんは相当気障野郎ですね!(笑)
リクエストありがとうございました◎







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