▼移香ラヴァーズ 一万打企画第四段です! 福蒼です! ↓ 漂うシャンプーの香りは、いつもと同じはずなのに。 移香ラヴァーズ いつからでしょうか。 福田さんが家に泊まりに来ると、その髪を洗ってあげるのが私の日課になりました。 一人暮らしのお風呂ですから、そんなに広くはありません。 (そう言ったら福田さんに嘘つけ、と言われました) 福田さんはバスタブに浸かって仰け反るように頭をバスタブの縁に預けます。 足は折り畳まれていていくらか窮屈そうですが。 私は、さすがに恥ずかしいのでバスタオルを体に巻いて椅子に座り、そっとシャンプーを手に取るのです。 「そんなん、無駄なのに」 「気持ちの問題です」 いつも福田さんはこのバスタオルを批判するけれど、これは最後の砦だと、わけのわからない自分ルールで抵抗します。 目を閉じて私の掌に全てを預ける福田さんはとても無防備に見えて、くすり、と微笑。 濡れた長い髪にそっと、指を差し込みます。 丁寧にシャンプーを馴染ませ、泡立てて。 もこもこになった泡で頭皮をマッサージ。 爪をたてないよう、指の腹を使ってわしゃわしゃと。 慣れたものだと自分でも思います。 最近は美容院でシャンプーしてもらう時にもコツを掴もうと秘かに指先に集中するようになりました。 その甲斐あってか、福田さんは私に髪を洗ってもらうのが好きだと、そう言ってくれます。 「痒いところはないですか?」 「んー」 「…どっちですか、その返事は」 「んー」 眠いのかしら。 瞼をおろし、少し鼻にかかった声で返事をする福田さんに苦笑を一つ。 まんべんなく洗い終わったところで、流しますねと声をかけてシャワーを出す。 綺麗に泡を洗い流すと、真っ直ぐな銀糸が現れます。 普段は隠れている彼の額が露になる瞬間。 こんなところ、私しか知らないのだという小さな優越感に胸が熱くなり水を拭うふりをしてその額を撫でた。 コンディショナーを掌にだす。 以前は『そんなもんいらない』と素っ気なく言っていた彼ですが、この頃はおとなしくされるがままになっています。 髪全体に馴染ませて。 いつもはそのまま洗い流すだけですが、今日はちょっと、特別。 「…あ?」 「スペシャルコースです」 いつもと違う感覚に、彼が一度だけ目を開けた。 髪をタオルでくるりと包む。 怪訝そうにこちらを見る彼に、タオルでパックしましょう、と笑いながら言うとふーん、と頷いてまた目を閉じてしまいました。 よほど心地がよかったのか、福田さんは本格的に微睡んでいるようで、全身が弛緩しているのがわかります。 無防備に曝された額に、喉仏。 深い呼吸に上下する胸を見ていると、自然に笑みが浮かんできます。 タオルで髪をくるんだ福田さんはなんとなく可愛い。 そっと額を撫でる。 愛しい。 そんな単語が頭を支配する。 「…福田さん」 「んー?」 「私に髪を洗われるの、好きですか?」 そういえばどうして福田さんの髪を洗うようになったのか。 最初は福田さんに甘えられたような気もするし、私が進んで触れたがったような気もする。 もしかしたら両方かもしれない。 「ん、好きだな」 その返事に嬉しくなって笑みがこぼれた。 そっと、精悍な顔の輪郭を辿るように指を這わせるとふるりと、彼の睫毛が揺れる。 愛しいという感情が溢れて、思わず瞼にキスを。 「…髪、洗ってもらうのも好きだけど」 不意にぐいと頭を抑えつけられる感覚に、心臓が跳ねました。 彼の腕がいつの間にか伸びていて、 真っ直ぐな瞳が下からギラリと光って見上げていて、 口角はニヤリとつり上がっていて。 「俺は蒼樹嬢の全部が好き」 ぐいと押されて唇が合わさる。 強引なそれに怯んだ一瞬に舌が侵入してきて、あっという間に翻弄される。 湯気で温まった空気ではすぐに酸素が足りなくなって、頭がくらりとした。 「んっ、ふ…ぅ」 何度も角度を変えるキスの合間に漏れる自分の声が浴室に響く。 激しいキスに、パサリと、彼の髪をくるんでいたタオルが落ちた。 ふわり、 漂った濃密な香りは自分と同じはずなのに。 「ぁ…ふくだ…さ…」 「なぁ、蒼樹嬢」 きっと私はトロトロに蕩けた顔をしていることでしょう。 福田さんの顔が満足そうに笑う。 「お礼に、身体、洗ってやるよ」 はらりと落とされた最後の砦のバスタオル。 抵抗するのも億劫で、返事の代わりに、自分から、 キスをした。 全身を満たすのは、彼の髪から漂う自分と似て非なる甘い甘い香り。 ぁゃ様リクエストの「福田さんの髪を洗ってあげる蒼樹嬢」です。 蒼樹さんのお部屋のお風呂は福田さんのものより広いと思います! もしかしたらねこ足のバスタブかも…と思いましたが… 皆様のご想像にお任せします◎ ちょっと福田さんがエロオヤジみたいなことになってしまいましたが(汗) 皆様に楽しんでいただけたらと思います! リクエストありがとうございました◎ |