おあずけ!!


今日は一万打企画のフリリク受付期間最終日です。
たくさんの方から拍手やリクエストをいただけて嬉しい限りです◎
本日いっぱい受け付けますので是非参加してやってください(*^^*)


さてさて週一更新頑張っておりますが、今回も福蒼です。
ではではどうぞ↓













おあずけ!!


つまらないなぁ、と思った。
そのすぐ後につまらないなぁ、と思った自分を恥じたから顔に出さないように気を付けた。
さりげなく視線を送ると変わらず作業を続ける自分の恋人がそこにいて、ふぅと、小さく小さくため息をついた。

今日は福田さんの部屋に遊びに行く日だった。

それは一週間前に決まったことで、決して急に決まった約束ではない。
故に自分はスケジュールをしっかり組んで仕事を終わらせた。レポートだって済ませている。
全ては、福田さんの部屋に遊びに行くために。
ちょっとした差し入れを作って、
ちょっといつもより綺麗にして、
ちょっとドキドキしながら(何度お邪魔してもやっぱりドキドキする)、
約束の時間よりちょっと早めにチャイムを鳴らしたのだが。
いつもより更に散らかった彼の仕事部屋を見た瞬間、なんとなく悟った。

「悪い、ちょっとそこ座って待ってて」

彼は仕事が終わっていなかったのだ。
仕方ないですね…なんて苦笑いしながら、指し示されたいつもは彼の優秀なアシスタントが座っている席に腰かけたのが二時間前。
(聞けば、安岡さんは風邪で休んでいるとか)
最初は自分と違う画材の使い方だったり、普段は見れない彼の仕事をする姿だったり、真剣な表情だったり…
そういうものを見て楽しんでいた。
しかしあんまり見るな、気が散ると釘を刺されてしまったため意識を持参した本に向けた。
それでなかなかに時間は潰れたが、いかんせん読み終わってしまってからが長い。
仕事をする彼を邪魔するわけにはいかないから声をかけられない。
面白そうな漫画や資料のある本棚に興味をそそられるが彼に断りなく触れるのは躊躇われて。
別室に移動しようかと思ったがせっかく会いに来たというのに別々の部屋にいるのも…と思ってしまい、動けなくなった。
ちなみに彼はこの二時間、あんま見んな、と言ったきり発言していない。
つまらないなぁ、と思った。
最初は一生懸命彼が仕事をしているのに、つまらないと思ってしまうなんて何事だ、と自分を律してきた。
が、だんだん腹が立ってきた。

『…福田さんは何とも思わないんでしょうか』

果たして二時間、はちょっと、に入るのだろうか。
突然の安岡さんの不在というアクシデントがあったことで仕事が遅れたのは仕方ないでしょう。
漫画が命!と言っても過言ではない彼のこと。仕事に誇りを持って、信じられないくらいの集中力を発揮する姿は同じ漫画家として尊敬に値する。
しかし。
今自分は何の目的でここを訪れたのか。

『…仮にも私たち、恋人…ですよね?』

我慢しよう言われた通りに待っていよう…といい子でいたのに、だんだん我慢が効かなくなってきた。
ねぇ福田さん、私は此処にいるんですよ?忘れてませんか?
わざと椅子を軋ませてみたり、咳払いをしてみたり。
遠回しにアピールしてそっと様子を伺うも、彼の目線は原稿用紙に吸い込まれている。
いっそ声を掛けようか、
…いや、やっぱりそれは駄目。自分の勝手で彼に迷惑をかけたくないし、面倒な女、なんて思われたくない。

あぁもう、なんて焦れったい。

どうせこっちを見ていないなら…
と体を倒して机に頬をくっつけた。敢えて福田さんと反対の方を見て。
早くしてください福田さん、二時間は今の私には長すぎます。
せっかく遊びに来たというのに…
ねぇ、どんどん時間が無くなっていっているんですよ、福田さん。
私がどれだけ今日を楽しみにしていたか、貴方は知ってらっしゃいますか?
なんて考えてたら目に水が溜まってきた。ますます情けない気分になって目を閉じる。
全部全部、福田さんのせいですからね。



カラン、という何かが机に転がる音、紙が擦れる音がした。
椅子が軋む音とパキポキと骨が鳴るような軽快な音。
それらが聞こえて思わず目を開ける。


「蒼樹嬢」


久しぶりに聞いた彼の声に我ながら恥ずかしくなるくらい勢いよく振り向いた。
振り向いた先にいた彼の目線は原稿用紙から実に二時間ぶりに私に向かっていて、にやりと笑って頬が片っ方赤いぜ、と宣ったのだ。

「…福田さんの仕事が遅いから待ちくたびれました」
「言ってくれるなぁオイ」
「だって事実ですから」
「構って欲しかった?」

からかうように言う口調にむっとなる。
拗ねんな、なんてクスクス笑いながら言う彼を睨めばさらに笑われた。

「悪かったって。
……おいで?」

なんて悪ふざけをするみたいに両手を開いて甘い声で呼ぶ貴方。
いつもは何言ってるんですか!!なんて一蹴するけれど…

「じゃあお言葉に甘えて」
「え?」

思い切り、その胸にダイブして首に腕を回せば目の前に驚き切ったように目を真ん丸にして硬直する貴方がいて。

「…ぎゅって、して下さらないんですか?」
「〜〜っのやろ!」

ぎゅうと背中に回った腕と真っ赤になった貴方の顔に免じて、私をからかった罪は許してあげましょう。

でも二時間もお預けされた罪は重いですからね、福田さん。
さて、どうやって償ってもらいましょう、なんて考えながらその首筋に顔を埋めた。







(蒼樹嬢を男前にしすぎた!笑
福田さんに『おいで』って言わせたかったんだ!
次は逆バージョンを書いてみようかな)






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