2人の時間は有効に



どうも○福蒼のお時間です。
カウンターが9000を回っていてびっくりであります。
もうすぐ一万…。私の予想を上回るハイペースぶりです。びっくりであります。
何か記念にやりたいなぁ…と考えていますが予定は未定…(オイ)

さて今回は沙弥さまからアイデアをいただいて書きました。
福蒼で名前ネタです。
ちょっとご期待に沿えることができたか謎ですが…
よろしければどうぞ◎









2人の時間は有効に


のんびりした温かい昼下がり。
俺はぼーっ、としながらあらぬ方向を見ていた。
人間観察も貴重な連載の取材とはいえ、限界がある。

女の長話ほどたちの悪いものはない。

ちらりと見下ろせば楽しそうに談笑する女子2人。
はぁ、とため息。
ちょっと気づけよ、と祈りを込めたが届かなかったらしい。
意に返さず話続ける俺のつれと、つれの友達。
楽しそうに話し込んでまぁ、人のこと放り出して。
久々に2人で街に出たと思ったらこういうことになる。
たまたま遭遇した顔見知りと立ち話。
それがどちらか一方と深い仲だったら尚更たちが悪い。
いい加減街行く人の観察に飽きたためこの2人をバレないように観察することにした。

確か俺のつれと楽しそうに話しているのは…高木くんの彼女(あ、もう奥さんか)だな。
結婚式でしか会ったことはないが、よく話題に登場するから勝手に旧知の仲な気分だ。
結婚式のときのドレス姿はとても綺麗だったのを覚えている。
きりっとした美人だな、と思っていたがこうして見ると年相応の快活な女の子だな、と思った。
高く結んだ髪にデニムのミニスカート。そしてパーカー。
元気で明るくてハキハキしてて、でも女の子らしい。
つれの言う通りの彼女の様子は目の前にするとさらに好感を持てた。
名前は香耶、といったか。
話すと気が合いそうな気がした。
確か彼女が色々アドバイスをしてくれていた、と聞いている。
言うなれば俺たちの恩人、なわけだ。

対して自分のつれは…
淡いベージュのニットワンピースにショートブーツ。
触れるとすべすべなことを知っている栗色の髪が柔らかな風に揺れている。
対照的な2人だなぁ、と思う。
だから逆に上手くいくのか。

楽しそうに笑う2人は贔屓目なしに、綺麗だな…と思う。
明るい休日の日差しに女の子の談笑。うん、絵になる。
相変わらず俺のつれは長い睫毛だなぁ、とか、香耶の笑い方は豪快だなぁ、とか。
ぼんやり2人を観察するのも限界が訪れてきた。
いくらなんでも、長すぎじゃないか??
ちらと時計を見ると15分以上が経過している。
人によると思うが、俺にとっては放置されるには長すぎる時間だ。
つまりアウト、というわけで。
かわいい香耶ちゃんには悪いが(さっき挨拶も交わしたし、きっと次に会うときはもっと絡むこともできるだろう)
そろそろ切り上げさせようか。
この後観たいと言っていた映画に行く予定だったし、時間は大切だ。
意を決して口を開くことにした。

「優梨子。そろそろ行かないと遅れっぞ」
「え!?もうそんな時間ですか真太さん!」

ようやくこちらを向いた俺のつれこと蒼樹紅、本名青木優梨子はびっくりしたように大きな瞳をさらに大きくさせていた。
その目に自分が映っているのを見てちょっと安心した、なんてカッコ悪くて言えないけれど。
それでもすみません…と小さく肩を竦める姿を見れば頬が緩んでしまうのは仕方ない。

「香耶さんも、長々とすみませんでした」
「…え?あ、いえ、私は全然かまわないんですけど…」

ぽかん、としたようにこちらを見てくる香耶ちゃんに、首を傾げつつも謝罪の言葉を述べた。

「悪いな。この後お茶でも飲みに行けたらよかったんだが。また今度、高木くんも一緒に飯でも食おうか。優梨子も喜ぶし」

あ、まただ。
またびっくりしたような顔をする彼女に、俺たちは2人で首を傾げる。

「名前…」
「え?」
「優梨子って、蒼樹さんの本名ですよね?…名前で呼び合ってらっしゃるんですね。ちょっとびっくりしました」

でもよく考えたらそれが当たり前ですよね…と、香耶ちゃんは何故か照れ臭そうに笑う。
ちょっと考えてみて、そういえば顔見知りの前で名前を呼ぶのは初めてだった…なんて思ったら何故か急に気恥ずかしくなった。
ちら、と隣を見ればもう彼女は可哀想なくらい、真っ赤、で。

「デートの邪魔をしてすみませんでした。今度ぜひお食事誘ってください、福田さん」
「お?おぅ…」

じゃあ、といって手を振って去っていった背中のなんと爽やかなことか。
俺の隣では相変わらず、真っ赤になったつれが固まっているというのに。

「おーい、大丈夫か?」

その顔を覗きこもうと軽く屈む。
と、くいと袖が引かれた。
お?と思うと恥ずかしさからかちょっと潤んだ瞳が見つめてきて、ドキリとする。

「………真太さん」
「ん?」
「人前で名前で呼び合うのは、我慢しませんか?」

じゃないと恥ずかしくて死んでしまいそうです…なんて、可愛い震えた声でいうものだから断れない。
まぁもとより、仕事モードとプライベートな時間の区切りはしっかりつけたいから、きっと作家仲間の前で彼女を本名で呼ぶことはないだろう。
それはつまり、

「…でも、今はいいだろ?」

袖を引っぱっていた彼女の指を絡めとり、つなぐ。
つまりは彼女を本名で呼ぶときは完全なプライベートな時間、俺がくつろぎたいありのままの彼女を感じたいと思う時間であるということだ。

「な、ゆりこ」

優しく名前を囁けばぴくりと肩を震わせた体が確かに頷き、俺の言葉を受け入れるかのように、絡めた指に力が込められたのだった。






(実は名前に関して別verが浮かんだので今書いてるところだったりします)
(こんなんでいいですか沙弥さま!??)






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