▼巻き込まれる人々 どこかで聞いたようなタイトルですが… タイトルつけるの苦手なんです(>_<) いっつも福田さんと蒼樹さんばっかりなので、色んな人たちを出してみたかったのですが。 いまいち口調が掴めてなくて残念です。 コミックス買ってないのでどこまで刊行されてるかわかりませんが、微妙にネタバレ含んでいる…かもしれません(曖昧ですみません) ご注意ください。 ではではどうぞ↓ 巻き込まれる人々 目撃者;高木夫婦 「あ、ねぇねぇ、あれ蒼樹さんと福田さんじゃない?」 そんなふうに香耶ちゃんが言う方向を見れば、ちょっと離れたところを見慣れた背中が歩いていた。 「あ、ほんとだ」 「でも何かしら…なんかすれ違う人がみんな見てくけど…」 一瞬、それは色んな意味で二人の外見のせいではないかと思った。 蒼樹さんは誰もが認める美人で、福田さんだってかっこいいと言われるタイプだろう。 銀髪にニット帽を被ったシュッとした感じの福田さんと、ふんわりした柔らかい雰囲気の蒼樹さん。 1人でも目立つ2人が意外な組み合わせで歩いていればそれは目立つ。 しかしちょっと足を早めて距離を詰めてみれば、なんとなく、雑踏に混じって2人の怒鳴り合う声が聞こえた。 「…まさか、喧嘩してる?」 「…」 香耶ちゃんが心配半分呆れ半分、といった顔で覗き込んできた。 あの2人らしい、といえばらしい。 しかし何もこんなところに来てまで(しかもこんな雑踏の中で)喧嘩しなくても…と思う。 「間に入ったほうがいいかな…」 「あー…どうかな…でもあの2人止めるのは無理だろ」 なんて俺たちがやいのやいの相談してる間も2人の口論は続き、まるで『フン!』とでも言うように蒼樹さんがそっぽを向いた。 ニット帽ごと頭をかいている福田さんの背中から、はぁ、というため息が聞こえてきそうな気がして思わず同情する。 これは2人に合流して間を取り持ったほうがいいのか…と思っていたときだ。 あ、と香耶ちゃんが呟いた。 今までずっとポケットに突っ込まれていた福田さんの手がバッと蒼樹さんの手を取ったのだ。 びっくりしたように蒼樹さんが福田さんの方を見た。 それをさらにぐい、と引き寄せ、(何かを囁いたように見えた)その途端に離れていてもわかるくらい蒼樹さんが真っ赤に。 「「…あー…」」 見てはいけないものを見てしまったような… 妙に気まずい思いをする俺たちの前で、今までが嘘みたいにぴったりくっついて2人が歩き始める。 「…なぁ香耶ちゃん」 「なに、秋人さん」 「あの2人付き合ってんだよな」 「まぁ、はっきり聞いたわけじゃないけどね」 「蒼樹さんから色々話してもらってるんだっけ?」 「うん」 「じゃあ今度、遠回しに注意してあげなさい」 「りょーかい」 人前であんまり見せつけないほうがいいですよ、ただでさえ御二人は目立つんですから… なんて思いながら、俺たちは2人で盛大にため息をついた。 目撃者;真城 福田組の集まりが行われている居酒屋は、ノリが体育会系な感じだけど店員さんがしつこくなく、個室で、照明も暗すぎず。とかなり過ごしやすく気楽な店だった。 大学に入ってもマンガばっかで、こういったところに縁がない自分としてはありがたい。 もしかしたら今回の集まりを企画した福田さんが配慮してくれたのかもしれない。 グラスの半分くらいになった烏龍茶に口をつける。 平丸さんは相変わらず酒に飲まれてよくわからない話を繰り返しているし、 エイジとシュージンは酒が入ってないはずなのにかなりのハイテンションで平丸さんを煽っている。 あらかじめ離れていてよかった、と心底思うような光景を横目に見つつ、 実は今は今で、自分の身の置き所に困っているのだ。 「どした?真城くん」 「え!?あ、いえ…」 福田さんは相当お酒が強いらしく(というか平丸さんが弱すぎるのかも)顔色もテンションも普段通りで、マンガの話や、担当やアシスタントの面白い話なんかをしてくれる。 だが。 妙に居心地が悪くそわそわする、目のやり場に困って福田さんのほうを見れない、気まずい。 そんな気分になってしまうのだ。 その原因はひとえに、 蒼樹さんが(あの蒼樹紅がっ!!) 福田さんの膝枕ですやすやと眠っているからである。 そんなに弱くないはずの蒼樹さんがこんな姿になっているのはレポートを遅くまでやっていたからだと聞いている。 ちら…と眠る蒼樹さんを見て、また慌てて目を反らした。 あぐらをかいた福田さんの太股に頭を預け、膝を曲げて丸まるように眠る蒼樹さんはやっぱり綺麗で、起きてるときよりちょっと幼くて… かわいい。いや亜豆もかわいいけど、いやいや蒼樹さんもやっぱり相当かわいい… 赤面してしまったであろう自分が情けなくなる。 「……福田さん、あの…」 「ん?」 2人がそういう仲なのはなんとなく気づいていた。 改めて付き合ってます、と言われることはなかったが福田組では暗黙のルールだった(ただし平丸さんを除く)。 今の様子を見ていれば事実は揺るぎないものなんだろう。だがしかし。 こんなにも堂々と見せつけられたことなんかないためはっきり言ってかなり反応に困っていた。 あまりにも福田さんが自然すぎて(ちゃっかり蒼樹さんの髪を撫でちゃったりしてるし)触れないでおこう、とか思っていたが。 蒼樹さんのほっぺたをぷにぷに触りだした福田さんにさすがに慌て、勇気を出して言ってみることにした。 しかしなんと言えばよいのか、どう言えばいいのか。 悩んだ挙げ句口にしたのは前に何処かで誰かに言ったようなセリフだった。 「福田さん、蒼樹さんぐっすり眠ってますけど、いいんですか?僕なんかに蒼樹さんの寝顔を見せてしまっても」 遠回しに、起こしてあげたほうがいいのでは?とか、人目につかないようにイチャついてもらえませんか?とか… 色んな意味を込めたつもりだったのだが、福田さんはキョトンとした後、こう宣ったのだ。 「え?可愛いだろ?」 「……」 やばい。まさか福田さんも酔ってる? そんなふうに思った矢先に、ぅん…という声と共に蒼樹さんの目がうっすら開いた。 「…ん、福田さん…?」 「おう、大丈夫か?」 「すみません…まだ…眠い、です…」 「ならもうちょっと寝てろ」 「…ん」 きゅっ、と福田さんの手を握った蒼樹さんにピシッと自分が固まる音がした。 福田さんは福田さんで手を握り返して、ふんわりと、今まで見たことないくらい柔らかな顔で微笑んだものだから、もう何も言えなくなってしまった。 「どした?真城くん」 「…いえ」 これは福田さんも顔にでないだけでけっこう酔ってるのかも…あまり寝てないって言ってたし。 …ん?待てよ。2人とも同じタイミングにあんまり寝てないってことになるよな…まさか…蒼樹さんはレポートって言ってたけどひょっとして… と考えて頭を思い切り降った。駄目だ、考えちゃ駄目だ。 福田さんが持つ焼酎のグラスを見て、もう諦めてしまった僕は気づかれないように、でもちゃっかりとため息をついた。 (平丸さんがあっちにいてよかった!) オマケ;平丸さんと吉田氏 「あぁ…」 「なんだい平丸くん。今にも死にそうな声だして」 「あぁ…吉田氏…僕は…僕はもうダメです…」 「何を言うんだい。ラッコは掲載順もコミックスもアニメだって、意外すぎてびっくりするくらい素晴らしい軌道に乗ってるじゃないか」 「…例え仕事がうまくいっていたって…私生活がうまくいってなかったら意味がないんですよ!!」 「……また蒼樹先生か」 「うぅ…」 「一応聞こう、何があったんだい?」 「新妻くんが…新妻くんが福田先生と蒼樹先生が付き合ってるって言うんです!!」 「!そうか…」 「亜城木先生もそんなようなことを言ってらしたし…昨日の飲み会でもなんだか2人でいい雰囲気だったみたいだし…」 「…で、つかぬことを聞くが君はその飲み会のとき何をしてたんだい?」 「うっ…」 「どうせ飲んだくれて記憶がないんだろう」 「うぅ…」 「飲み会はチャンスだとあれほど言ったじゃないか。さりげなく蒼樹くんの隣に座って、いつもより酔わせてしまえば帰りだって送りやすくなるし、嬉しいハプニングだってあったかもしれないのに」 「もうそれ以上言わないで吉田氏!!」 「(どうせ福田くんが送っていったんだろうな…)」 「うぅぅ…僕は…僕はダメな人間なんです!蒼樹先生を手にいれることなんか不可能なんですうぅぅ!!」 「…まったく。女性は蒼樹くんだけじゃないってあれほど言っているだろう」 「僕は蒼樹先生がいいんです!!」 「…そこまで言うのか。…よし。平丸くん。君の真っ直ぐな気持ちを汲んでアドバイスを授けよう」 「!!吉田氏…っ」 「新妻くんや高木くんや真城くんが何と言おうと、君は福田くんと蒼樹くんが2人きりでいい雰囲気になっているとこを見たのかい?」 「!」 「蒼樹くんが福田くんのことを好きだと一言でも君に言ったのかい?」 「それは…」 「だろう?君がそうだと認めてしまえばそれは事実だが、決めつけるのはまだ早い。つまりまだチャンスはある、ということだ」 「吉田氏…」 「さぁ涙を拭くんだ平丸くん。これからも僕は仕事もプライベートも君を全力でサポートしていこう」 「吉田氏!!」 「(まぁ実際あの2人が付き合っているのは事実だろうな。やれやれ、平丸くんもいつになったら目を覚ますことやら)」 オマケのオマケ 「…福田さん」 「ん?」 「私、昨日あんまり記憶がないんですけど…変なこと、してませんでしたか?」 「別になんもなかったぜ?二杯飲んだだけで眠りこけてたしな」 「せっかく久しぶりに皆さんと集まれたのに、残念です…」 「夜更かしするからだ」 「…誰のせいで眠れなかったと思ってらっしゃるんですか」 「さぁな」 「もう…福田さんのバカ」 「……うっせぇ」 クスクス笑いながら蒼樹さんが福田さんに抱きついていることも、2人が一緒のベッドに眠っていることも、平丸さんは知らないのでした。 (色んな人に福蒼を目撃してもらいました!) |