真っ白の病室。


その壁に寄り掛かり、ジッと俯く土方さんに、

ベッドの隣に立ち、涙を流す近藤さん。


そして…もうじきに、事切れるであろう人の手を握り、しきりに喋りかける総悟さん。



そんな人達をただ上から眺めるしかできない私がいた。







気がつけば、身体と精神が切り離れた状態で、

幽霊になったかと思ったけど、ベッドで眠る私はまだギリギリ生きているらしい。


だけど、さっきから次第に間隔の長くなる心音や、今の私の状態から

きっともう、死んでしまうんだろう。






(…私は、幸せだなあ。)



フワフワと浮きながら、フと思う。


忍になる決意をしたあのときに、碌な死に方はしないと覚悟していたけど、


病室の三人、そして廊下で待機している大勢の隊士達を見ると、

私は、恵まれていたんだな、と実感する。




ただ、




「嫌だ…頼む…!!

…俺まだ、何も伝えれてねェだろィ……。」





この人を残していく事だけ、それだけが私の心残りだ。





「(ごめんなさい。)」



そう呟くも私の声は届かなくて、

彼の背中を見ている事しかできない。





「…お前はどんだけ卑怯なんでィ。

約束も守らず、言い逃げたァ…いい度胸じゃねェか…。」



「(……………。)」



「お前、生きたいって言ってただろ!

だったら生きろ!!…生きてくれ…頼むから…」





初めて見るこんな必死な彼に、私の頬に何かが流れた。







生きたい。




できる事なら、

この場所、この人たち…そして、総悟さんと共に、生きたい。




だけど、




「…っ…なんで、……。」



さっきよりも静かになっていく心音に、終わりを感じる。








…小さかったあの頃、

ずっと欲しがっていた『私』でいれる場所も、


安心して寝る事ができる環境も、


忍であるのに、『私』として…人として接してくれる人たちとの絆も



全部全部、終わってしまう。







…私はどうしたい?


このままでいいの??




そう思うと、自然と身体が動いてた。







「(…っ、…嫌だ…、私、生きたい…)」




手が、自分の身体へと伸びる。


すり抜けてしまうと思っていたのに、身体に触れた指先から、身体が暖かくなっていく感じがする。



…よかった、




これできっと、

貴方の涙を拭う事が出来る。





初めて自分から求めたもの。

大切なー……

























ピクッ


「…愛…?」


「………、


…もう、…泣かない、で…。」



「…愛!?」







ぼやける視界の中、ゆっくりと握られた手を握り返す。



「……帰って…きちゃいました…。」




ゆっくりと、でも伝わるように、言葉を繋ぐ。


彼の頬を拭う前に、思いっきり抱きしめられた。


上を向くと、安堵した表情の土方さんと涙で顔がクシャクシャになっている近藤さんに、頭を撫でられる。




冷たかった体が、総悟さんの体温で温まっていくのを感じて、

生きてるんだと、再確認した。



私の大切な場所。

ちゃんと戻ってこれた。



「…よかった…。」



耳元で聞こえる声に微笑み、ゆっくりと背中に手を回した。






ただいま
(私の大好きな場所へ。)





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