パンパンと乾いた銃声が飛び交い、それを勘だけで避ける。


先ほどカスってしまった、左太ももと右肩からは血が滲み出て…



本当に痛い!



「侍が飛び道具使うなよ!ちくしょう!!」



背後では6人が私を追っているけど、有難い事に廊下は横に三人までの幅しかない為、無様に仕留められたりはしていない。


だけど、障害物のほぼ無い廊下で逃げ切るのは、中々骨が折れるわけで。



「ック…!!」


客室のドアを開け、身を隠し銃弾を避けて、苦無で右手首当たりを狙う。



「痛ェ!!」

「おい!大丈夫か?!」



一人しか当たらなかった事に舌打ちをするも、相手との距離が縮まる前に先へと駆ける。



だいたい今で10分ぐらいか。

ホールがあるこの先は、さっきまで騒がしかったが、今は少し落ち着いていた。



…早くゴールしないと、さっき銃弾に怯んだ衝撃でお面がだいぶ緩んでるんだよね。


ホールには、一番隊から三番隊までの全員がいるし、そんな大人数の前でみっともなく素顔を晒す事なんてしたくない。




自然と早くなる足に力を込めると、

先にある大きな扉が見えて、思いっきり飛びついた。





ガチャ…!





「っ着いたー!!」




扉を開け、柵から見下ろすと、返り血を浴びた総悟さんと目が合った。


一階にあるホールでは敵はほぼ壊滅状態で、見事に制圧済みみたい。


流石だなあ…。と、感心するが、そんな場合じゃない。


後ろから聞こえる足音と銃声にハッとし、右に避けて、そのまま下へと続く階段へと駆ける。





最上段からそのまま飛び降りてしまおう。

きっとこちらに向かってくれている総悟さんが受け止めてくれる筈だ。



我ながら頼りきってるなあと少し笑い、

飛び降りる為、右足に力を込めた。








筈だった。









「……っ…ぁ……。」



身体に重い衝撃が入るまでは。





「愛…?!!!」





カランカラン


と音を立てて、衝撃で緩んだ面が階段から転がり落ちる。





広がった視界に見えたのは、たくさんの視線と絶望した総悟さんの顔。






視線を下に移すと、わき腹から見える鋭い刃。


それを見て理解した。






どうやら一階の騒ぎの最中に隠れて、様子を伺っていたと思われる残党に、刺されたらしい。



…気配に全く気がつかなかった。




「…っ!あぁ…!!」



思いっきり引き抜かれ、身体がふらついたところに、


背中を蹴られ、最上段から宙に掘り出される。




刺されたところが、熱い。




霞む視界に総悟さんが映ったと同時に、軽い衝撃が身体を包んだ。





「す…み、ませ………。」




「もう喋んじゃねェ!!!!!!

オイ!!救急車呼べ!!!
あと、無線で近藤さん達に連絡しろ!!!」



総悟さんに抱きしめられながら、呼吸を整えようとするけど、私の口からはヒューヒューと乾いた音しか出なくて、うるさいぐらい鳴っている心臓は一向に落ち着きそうにない。


血の量を見ると、急所は外れてるにしろ、危ない状態だろう。




バタバタと聞こえる足音で、先陣をきらないといけない彼をここに留めている事が申し訳なかった。




「……わ、たしは…、置いとい、て…」


「出来るわけねェだろ!!!


…死ぬな!!…っ、頼むから…」




カタカタと震える手が肩越しに伝わる。


泣きそうな総悟さんの顔を見ると、なんだかこっちまで涙腺が緩んでしまった。






「…っ、まだ…生き、…たい、…なぁ…」



「もうじきに、救急車が来まさァ…。
そしたら、助かりやすぜ。」


「や、くそく…守れ、なくて…、…すみ、ませ…」


「そんなん退院してからでも、」


「まって…さ、いご、…かも、しれない…から…」



震える手をあげて、彼の涙を拭う。


反論しようとする彼の言葉にかぶせるように呟く。



これで最後なら、後悔しないように。







「…貴方、の…こと…、…きっと…、……ずっと、ま、…え、から……」







私、笑えてただろうか。




暗くなっていく視界と力が抜けていく身体に身を任せて、そのまま落ちていった…。







深く深く
(彼の声は、もう聞こえない。)





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