「…あと、右側の廊下に三人。
その奥の部屋には、一人が仮眠をとっています。


Bからは以上です。これからCに向かい合流します。」



無線で連絡し、一息つく。



深夜0時。
作戦に基づき、敵船に潜入していた。



一階の広場に敵が固まって宴会中みたいで、奥の方は人が思ったより少ない。



(これならC方面も少ないだろうな。)



そう思いながら、物音を立てずに換気口を進む。



すると、ガタッと音が聞こえて、思わず身構えた。





(…え、まさか…。)


音が聞こえたのは、換気口の先。


落ち合う予定の倉庫方面からで、嫌な予感がする。






素早く体を捻り、合流地点へ向かうと換気窓が空いた状態で、神無月さんはそこにいなかった。





(あ〜…まじか……。)



下の廊下を伺うとちょうど行き止まりのところで、
火薬が入っていると思われる箱が積まれている。

その奥に丸くなって隠れる、神無月さんが見えた。




「(何があったんですか?)」


唯一の救いは、しっかり無線機は装備しているところ。

なるべく小声で、彼の無線へ問いかけると、泣きそうな顔で見上げてきた。



「(懐中電灯を落としてしまって…焦って…。)」


「(そこから音を立てずに、こちらまで…は、無理そうですね。)」



真上にある、この換気口まで体格のいい神無月さんが上がることはきっと無理だろう。


この場所に隠れていてもらって、救助を待つにしても、体全体が隠れている訳じゃないから、敵がこの廊下へ来た時点でばれてしまう。


…万事休すだ。




「(…そこでジッとしていて下さい。)」



神無月さんにそれだけ伝え、彼が頷いたのを確認してから、土方さんに無線を繋いだ。




「(やっちまいました、土方さん。)」


「…おい、何事だ。」



「(神無月が今、合流地点の下の廊下に隠れています。
…敵に見つかるのは時間の問題かと。)」



「…予定では、あと20分だが持つか?」


「(廊下の先でさっきの三人の声が聞こえます。…無理っぽいっす。)」



苛立つような舌打ちが聞こえて、ため息をつく。


耳を澄ますと、三人の足音が近づいてきていた。

あと5分ももたないな…。





「(…突入時間、早める事できますか?)」



今この状況を踏まえて、頭の中で短時間で練り上げた作戦も、成功できる確率は少ないけど、もうこれにかけるしかない。


「(あと5分後なら、いける。)」


「(なら、私が囮になります。

奥の敵をなるだけ引きつけて、ホールへ向かいます。)」


「…それが最善か?」


「(はい。
ホールに着くのは、早くて10分前後。

それまでにホール押さえといて下さい。)」



そう言うと、無線の向こうで土方さんの命令が聞こえる。


そして、その背後から私を心配する声が飛び交って、申し訳なくなった。




(後日、みんなに謝っておかないとなあ。)



面の下で苦笑いし、神無月さんに、



「(助けが来るまでジッとしてる事。)」





と、それだけ言い残して、さっき来た換気口の道を折り返す。




さっきの三人を見据え、呼吸を殺した。




下を伺い、三人の背後になるタイミングを見計らいーーー。







ガタガタッ…ストンッ…


「あー、落ちちゃった!(棒読み)」



換気窓をこじ開けて、下の廊下へと降りる。


音に気がつき、相手が振り返ったと同時に、



「…え?…おい!!」


「こいつ侵入者か!?」


「捕まえろォオ!!!!」



ホールへ向かい、駆け出した。







鬼さんこちら
(手のなるほうへ!!)





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