「土方さんは監察使いが荒過ぎます!」


「アホか。
普段その分休みやってるだろうが!」


「決戦日に監察が私含めて3人しか生き残ってないのは、どういう了見でしょうか?!」


「配分決めんのはお前のさじ加減だろうが!
新人に優し過ぎんだよ!鍛えさせろ!!」


土方さんの部屋で、今の状況に噛み付くも、全て筋が通った言葉でねじ伏せられる。

それが一番ムカつくんですけど。




あの日から二週間後。

監察隊フル稼働で、情報収集に回り、やっと今日の深夜に敵の拠点へと突入するまでにこぎ着けた。


が、問題が一つ。


敵の拠点とする現在停泊中の船は、思ったより広い。
効率よく、被害を最小限にする為に、先に監察が忍び込んで、敵の位置など細かな情報が必要になるんだけど、

今日までの張り込みや潜入捜査などで監察の殆どが睡眠不足と疲労で、今日動けそうな人が三人しかいないのだ。


…私と退さんは睡眠不足疲労とか関係なしで土方さんにメンバー入りさせられてるんだから、ちょっとぐらいの愚痴は許してほしい。




「…今回は麻薬取引ではなく、過激派の攘夷浪士だ。

あいつのフォローはお前にかかってんぞ。」


「多大なるプレッシャーありがとうございます。くたばれ、土方。」


「お前マジで総悟に似てきたな。」


あいつというのは、この前監察に入ってきた、神無月という新人さんの事で。

監察だというのに、過度に緊張してしまうちょっと真面目で、ハッキリ言ってしまうと潜入には不向きな人である。


今回は失敗すると命まで危ういというのに、今のこの状態なら駆り出される以外の選択肢はない。



「A地点から退さん。B地点から私でCから入る神無月さんと途中で私と合流します。

まあ、Cは倉庫で人はいないでしょうし多分大丈夫でしょう。」


「油断するなよ。」



その一言に土方さんなりの心配も含まれているんだろう。


面の下で笑い、了解ですと呟く。




まだ次まで時間があるから、部屋で仮眠でもとろうと立ち上がったとき、オイっと土方さんに引き止められた。



「総悟の件だ。」


「……プライベートですよ。」



「お前らなんかあったろ。」


「プライベートですよ。」


私がそう言うも、煙草に火を付けるこの人は話をやめる気はないらしい。


これは上司からではなく、土方さん個人の話だろうな。

そう思って、また座り、だらしなく足を崩した。




「お前らがあんな調子じゃ周りが勘ぐるんだよ。また喧嘩したって噂になってんぞ。」


「してませんしてません。
私達いつも通りじゃないですか。」



「お前、総悟に関しては嘘ヘタなんだよ。」


「……自覚はあります。」


今回の任務で時間が空いたとき、屯所に帰ろうと思えば帰れたんだけど、あえて帰らなかった。


その原因というのは、もちろん総悟さんの事で。



よくよくあのときの、あの台詞を思い出すも、時間が経てば不安へと変わって、会い辛くなってしまっていた。



…私は、自分が思っているより、『女』であるのかもしれない。


もし、あの台詞の後に続く言葉が、否定的な物であったら、きっと立ち直れない。


…もし、

あの台詞の後に続く言葉が、私に好意を寄せているという事なら、


きっと私は…。





「面倒くせェとは思ってたが、遅かれ早かれ、こうなるとは思ってたんだよ。

…今更だ。」


「……私は…。」


「お前は真面目過ぎだ。

忍である前に、ここでは監察長だろ。
感情がねェと困る事だってある。


総悟と連んでから任務に失敗した事だってねェだろ。


…どっちに転ぶにしろ、今の状態が面倒くせェから、さっさと決めろ。」



そう言い、話は終わりだと書類の溜まる机へと向う土方さんの背中を見つめる。





「流石、フォロ方さん。

…ありがとうございます。」



…なんとなく、吹っ切れたような気がする。

まだ怖い部分もあるけど。






ストンと胸に落ちてきた感情は、なんの抵抗もなく収まってしまった。








…私は、総悟さんが、好きなんだろう。

それは勿論、友情以上の物で。






逃げてちゃ、何も始まらないし。

変わってしまう関係を恐れていては、前には進めない。






何かあったら、また愚痴でも聞いて下さいとだけ言い廊下へ出ると、

話の途中から気配を感じていた人へ目線を移す。


「…土方さんも心配性だねェ。」


「優しい人ですよ。」


廊下で私達の会話を聞いていたらしい、総悟さんと合流して自分の部屋へと向かう。



あの日から、久々の彼に胸が跳ねる。


…自覚をしてしまうと、こうも変わってしまうんだろうか。



たわいも無い話をしていると、すぐに部屋へと着いてしまった。



「さて、仮眠仮眠。」


「しっかり寝とけ。」



そう言われ、優しく頭を撫でられる。

それが心地よくて目を細めた。



「総悟さん、明日の夜空いてますか?


また、月見酒しましょうか。」



明日どういう話をするのか、私はどうするのか、全く考えてないけど、

土方さんの話を聞いていた彼も、思うところはあるだろう。



彼は笑って、明日が楽しみだと呟いた。








自覚した気持ち
(貴方の事が好き。)





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