嫁ぎ先が決まりました
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忍術学園くのいち教室唯一の五年生である私は「売れ残り」だったりする。


言葉は悪いかもしれないが、このご時世…女子は嫁いで、子を成して当たり前の時代。
くのいち教室上級生になるということは、家庭の事情で忍びになるしかなかったか…

もしくは、私のように売れ残った哀れな女子だけなのだ。





「なんで売れ残ったのさ。」


「なんでってそりゃ、私みたいな醜女な男女を嫁にしたいっていうツワモノがいなかっただけさ。」


授業で必要な火薬を取りに、火薬委員長代理である兵助と火薬庫に来ているときだった。

不躾な質問のようだが、同級生のいなくなったくのたま五年の私と長らく連んでいる彼の直球な言葉からは悪意も感じないし、

私も特に気にしてない。
(まあ、本当の事だし。兵助はオブラートを知らないから。)



高くに置いてある火薬壺を取り、中身を確認する私の視界の端で兵助の呆れた顔が写る。

何か言いたそうだけど、とりあえず無視して壺を抱えると思ったより大きかったせいで自然とガニ股になってしまった。


「別に愛は醜女とかじゃないと思うが、女子力が著しく低いな。」

「そんな物探したけど、見つからんかったわ。」

「探すな。生み出せ。」

「かっこいいな、それ。」


馬鹿なやり取りをしてると、いつの間にか抱えていたはずの壺は兵助の腕の中に。

…こうやって、ちゃんと持ってくれるのが兵助なんだよなあ。
なんだろう、サラッとやってのけるところが、くのたま下級生のハートを鷲掴むんだろうな。やるな。


「このプレイボーイめ。」

「あ?」

「まあ、兵助に嫁ぐ子は豆腐好きじゃないと大変だね。」

「愛は豆腐普通だからな。」

「?うん。普通。可もなく、不可もなく。
麻婆豆腐は好きだけど、高野豆腐はあんまり的な。」

「まあ、基準はそれじゃないし別にいいよ。

大切なのは裁縫とか料理とか。」

「あー。いるね、それ。」

「因みに愛の成績は鳴かず飛ばずだけど、村娘と比べるとソコソコ。」

「なんで私の成績出てきた?
…まあ、上級生ともなればシナ先生からゲンコツ喰らいながらでもしなきゃなるめぇよ。」

「その点の女子力は高いと思うよ。
この愛のギャップを知ってるのが、俺だけでよかった。」

「あの。褒められると反応し辛いんですが。どうした?」

「いや、ギャップ萌えだなと。」

「いや、どうした?いつもの兵助が恋しいんだけど。」

「可愛いよな、愛。」

「おい、やめろ。そんなノリに対応できるほどコミュ力高くない。」



変なノリの兵助の足を軽く蹴って、出口へと歩く。

本当どうしたんだろうか。
頭を捻るが、原因らしい原因が思いつかない。
あ、あれか、くのたま引っ掛ける的な宿題でも出たのか。


「優秀な兵助君の一番の敗因は私をチョイスした事だな。
ざまぁみろ、追試乙。」

「何を勘違いしてるかわかんないけど、これは俺の本心だから。」

「あの、豆腐の角で頭打った?
医務室一緒に着いてってあげようか?」


「愛って本当残念だな。」

「喧嘩売ってんのか?あ?」


出口を目の前に、兵助へと振り返る。

一発お見舞いしてやろうかと思ったのに彼は至って真剣な顔だったから、少し狼狽えてしまって反応が遅れた。





「俺のとこに嫁いでおいでよ。」





多分今の私は今までで一番の間抜け面してるんじゃなかろうか。







嫁ぎ先が決まりました
(え、本気?)
(本気。今度の休みは愛の家に挨拶行くから。)
(えぇええ?!)


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