03初夏の陽射しを朝から浴びながら、自転車を走らせる。
このまま、遊びに行きたいほど晴天だけど、残念ながら今日もお仕事な訳です。
「あ、総悟君おはよー。」
「はよごぜーやす。」
自転車置き場で寝癖のついた総悟君と合流。
まだ眠いのか、大きな欠伸をしながら、彼は振り返った。
「もう会議始まってるみたいですぜ。」
彼が指差した店内では、大人組(私達以外の人ね)と、このお店の裏の経営者である松平さんが真剣な顔で話し合ってるように見える。
今日は松平さんが来るから、お店を休みにして全体ミーティングする予定だったんだけど…。
「早っ!…こんな事だろうと思ったから、私も早めに出勤するって言ったのに。」
「愛は真面目だねェ。」
そう言いながら、総悟君がスタスタ歩いて店内へ。
私も彼を追って、同時にドアをくぐった。
「おはようございま…す?」
「なんですかィ。このピリピリした空気は。
とりあえず、土方そこどけや。」
「来て早々いい度胸じゃねぇか…。
総悟てめぇ昨日のレジ閉めサボった事覚えてるよな?!」
「まあまあまあ。落ち着いて落ち着いて。」
総悟君の言葉に土方さんが立ち上がるが、流石に会議中はマズイと一触即発の二人の間に入って必死に宥める。
チラッと土方さんの隣に座るみっちゃんを見ると「仲がいいわねぇ。」とニコニコしていた。…こりゃ駄目だ。
「…とりあえず、総悟、愛座れや。」
松平さんに言われて、空いてる席…先にみっちゃんの隣に座った総悟君の隣へ座る。
(相変わらず、貫禄あるなあ…。)
丁度、まこちゃんが珈琲を持ってきてくれたので一口飲みながら、松平さんを見るけど…テーブルに足を投げ出してる感じが、明らかにアッチの人っぽくて、少し緊張した。
「さっきの話の続きだが、…おじさんは、ここの女の子にモデルしてもらったらいいんじゃないのって言ってんだけど、さ。
なーんで、反対するのかねぇ。
お前らコスト考えてんのかコスト。」
「…一体、何の話でさァ。」
「おい、山崎ィ…てめぇ、伝えて無かったのか。」
「ちょっと!沖田さん!昨日言ったじゃないですか!
店頭用のポスターの件ですよ!ヘアモデル募集しようかって話!」
またもや、キレかける土方さんに怯えながら、退君が総悟君に説明する。
私も聞いてなくて、みっちゃんとまこちゃんを見ると、二人して苦笑が返ってきた。
「要するに、だ。
店頭用のポスターのモデルを喫茶組が担当したらどうだって話だ。
…うーん、俺はいいと思うんだけど。」
「勲さんがいいって言うなら、私は構わないよ。…ミツバは?」
「私なんかでよければ、大丈夫よ。」
二人は納得してるみたいだけど、土方さんと話が理解できた総悟君の顔は明らかに納得いかない顔をしている。
「人通りが多い道に見えるよう、デカデカと載せるんだぞ。
喫茶の方に女目当ての客が増えるのは明らかだ。」
「…めんどくせぇ客来たらどーすんでィ。」
そう言われて、近藤さんも押し黙る。
喫茶店は年配の常連さんも多いし、そもそも女三人だけのお店。
無駄な面倒事はなるべく避けたいのが本音だ。
「…愛ちゃんは?」
みっちゃんにそう言われて、顔を上げる。
「…私はみっちゃんとまこちゃん美人だし、ポスター見てみたいけど…。」
「……お前もポスターなるってわかってやす?」
「え!!?!私も?!!!」
てっきり二人の事だと!って周りを見渡すと、全員がため息をついていた。
…あれ。なんだろ、泣きそう。
「まぁ、いろんな意見があるが…、
反対意見は全部却下ね。おじさんが全部決めるからね。世の中、金だ。金。」
どこから出したかわからない葉巻を吸い上げ、言ってのけた松平さんにみんな顔を見合わせ、肩を落とした。
いきなりの大役(そもそもモデルって何したらいいんだろう?!)
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