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『そうごくん!もうできた?』

『じっとしてくだせェー』

『…もういい?』

『ほら、鏡。今日はお団子でィ!』

『わー!凄い凄い!!

そうごくんの手は魔法の手だね!!』



懐かしい思い出。7才ぐらいだったっけ。

小さい頃、みっちゃんと遊ぶ為に沖田家にお邪魔してたときは、決まって総悟君に髪の毛を結ってもらってた。


けど、中学になり、クラスが別で。
みっちゃんと遊ぶときも、外に行くようになってから、次第に総悟君との距離は開いていった。


「高校でここのバイト始めなかったら、総悟君とはそのまま疎遠だったよね。」


「…とりあえず、ジッとしなせェ。」


あのときと同じ台詞に吹き出しそうになりながら、鏡越しの総悟君を見ると、真剣に私の髪の毛を見つめている。



1Fの美容院の一番奥の席。
仕事入る前、よくここで総悟君にヘアセットをしてもらう。
総悟君にとっては練習なんだけど、ね。

でも、『SIN』が開店するのは『SEN』より後だから、今この時間の店内にはいつもより早く来ている総悟君だけ。

私にとっては二人で喋れる貴重な時間。
髪型も可愛くアレンジしてくれるし、願ったり叶ったりだ。


「…そういえばなんで、ここのバイト始めたんでィ。」


頭の中でイメージ出来たみたいで、器用にコームとピンで髪の毛を結っていく。
…このときの真剣な顔かっこいいんだよなあ。


「接客の仕事がしたくて、バイト探してたんだ。
で、みっちゃんとまこちゃんからお話頂きまして、トントン拍子に。」


あの頃の『SEN』はホールのバイト募集してたんだけど、下の階の土方さんや、当時見習いだった総悟君目当ての子が多くてロクに仕事しなかったらしい。

そして困った、みっちゃんとまこちゃんが、同じくバイトが見つからなくて困っていた私を拾ってくれた。


…で、そのまま、高校卒業して、ここに就職というわけ。


「ふーん。
まあ、愛が入ってこなかったら、会う事無かったかもねェ。」

「ねー。高校違うもんね。」


接点がまるっきりなかった私達が再び出会ったこのお店。

本当に大好きだなあ、とシミジミ感じてしまう。


だからこそ、この恋心は隠さないといけない。


「あ、そういえば、この前のヘアアレンジ、常連さんに褒められたよ!
可愛いねーだって!」


「常連って、前田のじーさん?」


「ううん、最近頻発に来るようになった、背の高い大学生君。」

「は?」


初々しいねー、なんて、まこちゃんに茶化されたのが、ついこの前。

確か、緒方君…だっけ。

最近勉強しに、うちに来てくれる事が多くなった子だ。

初めは、静かな感じだったけど、今は店が暇なときはちょっと世間話までする仲に。

髪型を褒められたときは、自然と顔がにやけて焦ってしまった。


「…え?お、怒ってる…?」

「別に。」


なんだか、少しブスッとしている総悟君に少し驚いてしまう。
…うーん、喜んでくれると思ったんだけど。

「男の子だから、細かいとこまでは見てないだろうけど、褒められたって事は総悟君凄いって事だよ!」

「ンな事、知ってらァ。」


納得がいかず、反論しようと思ったとき後ろから、出来た。の声が聞こえて、総悟君が後ろから鏡を掲げる。

細かい編み込みされている、綺麗なお団子。

よくもまあ短時間で出来たもんだと感心してしまう。


「凄い凄い!!総悟君流石だね!!」


「まぁ、俺の手は魔法の手なんで。」


その言葉でハッとして、後ろを振り返ると、いつもの意地の悪い笑い方をする総悟君がいた。


「恥ずかしい…。覚えてたの?」

「まぁな。


…とりあえず、おめーはもっと気をつけろィ。」


なにが?って聞こうとしたとき、階段上から私を呼ぶ声がする。


「あ!トイレ掃除まだだった!」


「とっとと行きなせェ。」


お団子を避けて、頭をポンポンと軽く叩かれる。


緩む口元と赤い顔を隠しながら、総悟君にお礼を言って、急いで2Fに上がった。


うん!今日も一日頑張れそうだ!





幸せな日々
(こんな毎日が続きますように!)


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