ーー任務帰りだった。

「勘右衛門!いけるか?!」

「まだ…、いけるっ!急ごう…!」

お互い負傷。痛む身体に鞭打って、学園まで急いでいた。追ってから逃れる為に。

五年のいつものメンバーでの任務だったのだけど、当初聞かされていた情報との誤差が大きく、拠点の深くまで侵入していた俺達い組は逃げ遅れてしまったわけだ。

「はぁ…はぁ…。ちょっと身を隠そう…。」

「…そうだな。…兵助、あの神社にしよう。…あんなとこに隠れるなんて敵も思わないさ…。」

どうやら無人らしい神社の屋根裏へ、そのまま忍び込む。息を整え、状況を把握するが、…今回、逃げ切るのは難しいかもしれない。袖を破り止血をするが、俺はまだしも勘右衛門はもう限界に近い。

「…なあ、兵助。」

「それ以上言ったら殴るぞ。」

「まだ、何も言ってないじゃん。」

伏せ目がちに発する言葉を予想するのは容易い。…俺だって、勘右衛門の状況ならそう考えるだろう。

「見捨てれる程、俺は優秀じゃないよ。…勘右衛門なら尚更。」

「…まあ、そう言われると思ったよ。」

ははっと笑う彼は、もう覚悟をしているんだろう。後ろを振り返り、何処からか入ってきたんだろう、真っ黒な猫を抱きかかえた。

「…俺も猫になれたらなあー。そしたら、まだ生きれたかも。」

「そうだな…。敵のいない遠くへ逃げ切れるのに。」

彼の腕の中で大人しく丸くなっている猫の頭を撫でる。

すると、ニャアと猫が軽く鳴いた。





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「(までなんだ。覚えてるの。)」

「(俺も。…なあ兵助、俺達死んだのかな?)」

「(いや、多分違う…と思う。)」

二人…いや、今は『二匹』で会議中。昨日から俺達を飼ってくれている主人(名前知らないから今はこう呼ぶ事にした。)のフカフカな高床の布団の上で。

気がついたら、猫だった。なんて信じられないが、今はそうなってしまったのだから、慣れる他はない。…初めは驚くとかそんな事通り越してたけど。

そして問題は今は多分、俺達がいた時代より大分先の未来という事。

主人に拾われる前は忍者の基本である情報収集に徹した。落ちている文書を読んだり、視界に映る建物達を観察したり…そうして行き着いた結論だった。きっと予想は合ってるだろう。

「(まあ、寝床は確保出来たし、ゆっくり考えてもいいんじゃない?)」

「(そうだなー。…本当いい人に見つけてもらえてよかった!俺飢え死にするかと思ったよ。)」

「(あの時は限界だったにしろ、勘右衛門はもうちょっと警戒心を……って…)」

「何、何、お前達楽しそうに喋ってー。私も混ぜてよ!」

「「にゃー!!」」

布団に潜り込み顔を出しながら喋っていたら、そのまま纏めて抱きかかえられてしまった。流石に驚いた。

さっきまで買ってきた、俺達用の便所とか寝床とかの設置が終わったらしい。彼女はニコニコと勘右衛門の頭を撫でていて…

……猫の本能が出ているんだろうな、少し羨ましい。

「どうしたの?…ちゃんと兵も撫でてあげるよー!ほらほらほら!」

「にゃー。」

…まあ、どうなるかわからないけど、とりあえず今はゆっくりと考えようか。





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