いつもの帰宅ラッシュの満員電車を降り、テクテクと1Kのマイホームまで歩く平日の中日である水曜日。
今日の私は一味違います。

明日を思って足が重くなる事もなければ、疲れた体を早く休める為にスーパーの半額になった惣菜を買う事もない。
だって!私は!今日から!自由なのだから!

そう、今日であの忌まわしい会社を退職する事になりましたよオホホホ。
お疲れ様です、と私とすれ違うスーツ姿のサラリーマンに内心会釈をし、軽い足取りで人気のない住宅街へ入る。

さて明日から何しようか。馬鹿みたいなブラック企業とやっとおさらばできたんだし、遊び倒してもいいよね。というか、休みが無かったからお金だけは溜まってるし、2.3ヶ月はニートするって決めてます。金ならあるのだ!私には!

「にゃー」

「ん?にゃんこ?」


聞こえてきた鳴き声に足を止める。と、同時に顔が緩んだのが自分でもわかった。無類のにゃんこ好きの私をナンパするかわい子ちゃんはどこだ。撫でくりまわしてやる。

キョロキョロと見回すが中々見当たらなくて、逃げたのかと諦めたとき、電柱近くで横たわる黒猫二匹を発見した。暗闇に見事に紛れてて気づかなかった。ちょっとビックリした。

「え、ちょ、生きてる?生きてるよね?」

私が近づいても微動だにしないから、しゃがみ込み手を近づけると、一匹を守るようにもう一匹が立ち上がった。
そして、

「っ痛!!」

見事に引っかかれてしまった。
フーッと私を威嚇するけど、その姿は弱弱しくて。

引っかかれた手を撫でながら、立ち上がって、来た道を引き返す。

しっかりと猫達に向かって「覚えてろよ!」と捨て台詞を吐きながら。





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