意志に反して肉襞が亀頭に纏わり付いていた。漸く与えられた餌に歓喜しているかのように貪り、舐め回しているかのような水音を立てる。
「……まだきついな」
涼がぽつりと呟いたのがやたら遠くに聞こえた。自分の心拍数に合わせて高い金属音の耳鳴りが耳孔に響き渡っている。
「は……ぁ…く、ぅ…」
戒められた性器に鋭い痛みが走ったが、身体は絶頂に持ち上げられていき断続的な痙攣をしながら背筋が強張り反らされていく。
「安居……?」
訝しげに尋ねた涼が更に上体を前傾させた為に亀頭部が一気に潜り込んだ。
「ひあぁああッ!」
自分の声とは思えない、女じみた悲鳴。腰と背中が大きく跳ねて絶頂を掠めた。激痛の走る性器が腹を打って、またほんの少しだけ精液を飛ばす。
全身の痙攣が治まらない。戒められてさえいなければ、先端を埋められただけで射精してしまっただろう事が判ってしまう。
「……ふ、ぅ…あ…違……違う……」
必死に否定し取り繕おうとしても涙が溢れて声迄震えて高く掠れた。
不意打ちに涼の左手が俺の性器を軽く撫でて、またそこで腰がくねる。必然、肉襞が擦れて平衡感覚迄判らなくなった。
「……誰でも良いって事か」
弄ぶように人差し指が亀頭の割れ目を軽く叩いてきて、連続した再度の絶頂を予感する。指先が結び目に掛かり紐を解き始めた。
「……嫌…解くな、涼…ッ!」
先端の膨らみは前立腺を圧迫する程には届いていない。これで射精してしまう所を見られたらまともに涼の顔を見られなくなる。
――その前に、涼が、俺を汚らわしく思うだろう。
「涼……ッ…涼…は、ぁあ…っ!」
必死に名を呼んでも紐は無慈悲に解かれてしまった。塞き留められていた精液が少しずつ零れ始め、排尿感に酷似した開放感に嚥下し切れない唾液が口端から伝う。
「……酷い面」
酷薄な言葉が精神的なダメージに追い討ちを掛け、腰もゆっくりと使われて身体迄追い込まれる。
浅い部分を掻き交ぜ肉襞を捏ね回す所作は酷くもどかしかったが、核心の快感に至らずとも絶頂感を欲していた身体には十分だった。
「動くな……ッ…あぁ…頼む、から…っ…!」
治まり切らない内に新たな痙攣が始まった。肉襞も咥えた性器に懸命に食い付いてその凶悪な形に歓喜している。
「イきたいんだろ?イっちまえよ、尻で」
左手首迄押さえ付けられて、もう俺に出来るのは、この醜悪に歪む顔を背け涼の視界に少しでも入らないようにする事だけだった。
ぐちゃぐちゃと派手な音を立てながら掻き回され、目の前が白と赤に明滅する。
「涼……っ…涼…!」
――ごめんなさい。
そう伝えられない喉は声無き悲鳴に震えるだけだった。


■ ■ ■ ■ ■


目を開けてもそこは暗闇だった。
身体には熱が篭っていたけれど、酷く肌寒かった。
身動ぎすると下肢に鈍い痛みが走り、思わず小さく呻く。
「安居」
不意に名を呼ばれ、半ば強引に身体を引き寄せられた。
痛みの波が治まって、漸くその腕の温かさに気付く。懐に潜り込むようにして少し頭を擦り寄せると、大きな掌が労るように髪を撫でてくれた。
「……誰」
俺は掠れた声で問い掛ける。
彼の名を、呼ぶ勇気を持てなかったから。
暫くの間を置いて、腕の主は答えた。
「……悪い夢、かな」
熱い涙が滲んで、彼の鎖骨に額を押し当てたら、俺を抱く腕に更に力が篭る。
感触の無い筈の髪に落ちた口付けは余りに熱くて、夢の続きにしては少し出来過ぎていた。
――こんなに悪い夢ならば、いっそ覚めないで欲しい。
目覚めてしまわないように、俺は幻の彼に縋り付いてまた、目を閉じる。



END


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