『こんばんはっ!名前です。
御指名ありがとうございます!』
あれから4年以上が経った頃。
スナックすまいるにて元気よく自己紹介する名前の姿が。
「おっ!名前ちゃん!待ってたよ///」
『お待たせしましたー!!』
まさか自分も夜の仕事をするなんて...
母と縁を切ってから一人暮らしを始め、
アルバイトで生計を立てていたが
正直、アルバイトだと生活が厳しく
20歳過ぎまで田舎の住み慣れたところで
夜の仕事をしていた。
だけど何か刺激が足りなく、つまらなくなり
江戸に上京し現在に至る。
「ーーーーーはぁ。今日もゴリラが煩かったわ。
動物園と間違ってるのかしらっ」
朝方の帰路の際、お妙が愚痴を零す。
『ゴリラって...お妙ちゃん(苦笑)
近藤さんって話した事はないけど、見る限りは
いい人そうだけど?』
名前の言葉にお妙は、自身の指をポキポキと鳴らす。
『..........あ、ごめんね; 』
「あら?あれは名前ちゃんの彼氏じゃない?
こんな朝早くから迎えに来てれるなんてラブラブね!」
『ラブラブねぇー。どうだろ。
私だったらこんな朝早くに迎えなんて御免だけどね。
でも大丈夫だよ!』
( 名前ちゃんって可愛い顔して魔性だな、オィ; )
「私と知り合ってから、その「大丈夫!」って
言葉聞くの7回目よ(苦笑)」
『えっ、そうなの?』
「まっ、いいから早く彼のとこに行ってあげて」
『うん、じゃぁお妙ちゃん!また夜ねっ』
お妙に笑顔そう言った名前は、男の元へと向かう。
その後、いつもの男女の行為を彼の家でする。
行為の最中、決まって彼は必ずこう言う。
「名前...愛してるよっ!」
その言葉が聞きたいだけかもしれない。
自分の居場所があるような気がするから。
彼女がいる男を寝とったことだってある。
罪悪感なんてない。私は最低な人間だ。
けれども「好き」「愛してる」って言われると
簡単に許してしまう自分は、やっぱり嫌いだ。
男の出勤前、名前が帰路の支度をしていると...
「 名前って本当に可愛いから不安になる...」
『えっ?』
「俺、友達からよく言われるんだ。
俺に名前は不釣り合いだって」
『なーに言ってんのぉ?私、可愛くなんかないし...』
彼は優しい。
今まで付き合ってきた男性も皆優しかった。
でもね、誰も信じれなかった。
信じれば裏切りられる気がしたんだ。
「ーーーーーーちゃん!?名前ちゃん!!」
『へっ??』
「へっ??じゃなくてよ!
もぉ〜しっかりしてちょうだい」
お妙に呼ばれて我に帰る名前。
もうすぐ営業開始時間だった。
『ごめん、ごめん。でっ、何だっけ?』
「今日、ちょっとだけゴリラの世話してくれない?」
『ごっ、ゴリラ!?世話って何;
てか、お妙ちゃんの客だよ!?
ねっ?ねっ?』
「あ"ぁ"!?なんかつったか?!」
『がっ、頑張ります(苦笑い)』
お妙の鬼のような表情に、名前は折れるしかなかった。
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