第十一章 刹識「随分疲れたのね。」 人識「大丈夫なのか?輝識兄ちゃん。」 俺は疲れて眠ってしまった舞織たちを眠らせると、疲れたようにソファに座った。 すると心配だったようだ、刹識と人識が駆け寄ってきた。 刹識「疲れているなら寝た方がいい。私たちは特に、また今度遊べればいいのだから。」 輝識「それじゃあ、刹たちが…」 人識「俺たちは輝識兄ちゃんが疲れてるのに遊ぶなんてそんなつもりはないぜ」 かはは、といつもみたいに笑う人識。 クスクス、といつもみたいに上品に笑う刹識。 なにも変わらない。 姿や形は変わっても、なにも変わらない。 刹識も人識もなにも変わっていない。 変わっていないからこそ、安心する。 輝識「じゃあ、お言葉に甘えて寝かしてもらおうかな。」 そう言って、俺は部屋に行かずそのままソファに横になった。 刹識「輝識、これ。」 輝識「あぁ、サンキュー。」 俺は刹識から毛布と枕を貰うと枕を置いて、毛布を被りうとうとと眠りについた。 最後に聞こえたのは最愛の弟妹たちの声。 人識「おやすみ、輝識兄ちゃん。」 刹識「おやすみ、輝識。いい夢を――」 刹識「輝識は頑固者だからな。」 輝識がしっかりすやすやと眠りについたのを確認すると、私は人識と話を始めた。 輝識はあの通り、頑固者でなかなか譲らない性格で、黎織もなかなか輝識と渡り合っていたぐらい困った性格だった。 困った性格だったけど、いいところもそれぞれあった。 なにかと言いながらもみんなを一生懸命引っ張っていてくれた輝識。 自分が辛いときも笑顔でみんなを励まして優しく接してくれた黎織。 どちらも大切な家賊だった。 人識「刹識、それを輝識に聞かれたら、」 刹識「わかってる。きっと『誰が頑固者だ!』って怒るんだろうね。」 輝識も黎織も、頑固者って言われることが嫌みたいで2人の前で言うのはやめようって話していた。 それを思い出して、つい笑ってしまう。 今思えば、いままでこうして笑い会う時間なんてあっただろうか。 輝識や黎織を助けることばかり考えていて、こんな笑える笑顔ある会話なんてあまり交わさなかった。 人識「どうした?」 刹識「いや、久しぶりに笑ったな、って。」 人識「…確かに、な」 かははっ、と笑いながら笑顔で返事をする人識。 そういえば、人識は笑顔の殺人鬼と言われていたことがあったか。 そんな彼でも、こんなに笑顔が増えるなんて。 輝識という存在はどれだけ大きい存在なんだろう。 これだけ影響があるんだから、黎織が覚醒したときの影響はどれほどのものなのだろうな。 そんなことより今は、輝識が覚醒してくれただけで、 刹識「それだけで、私たちは少し幸せになれるのだから。」 家賊愛って、すごく大切なんだよ――― 黎織や双識が言っていたことが今、よくわかった。 <<|back|>> |