零崎刹識の人間刹那 | ナノ

第十章








崩子たちと遊ぶのが終わると、待っていたのは匂宮トリオだった。
出夢と理澄は相変わらずのハイテンション。
それに溜め息をつきながら助けを求めるように俺を見る霊夢が揃っていた。


輝識「やめてあげろよ」


2人のテンションを下げるように促してみるが、下がらないどころかあがる一方。
これには手をつけられない。


輝識「だめだな。」
霊夢「いいよ。もう諦める。」


諦めて、このうるさい中本を読もうとする霊夢。
そんな霊夢の持っていた本を理澄が取り上げた。


理澄「だめなんだよっ!せっかく輝識お兄さんがいてくれているのに、本を読むなんてつまらないよっ!」
出夢「そうだぜぇっ!霊夢も一緒に楽しもうぜぇっ!」


そう言って大騒ぎする2人をほっておく霊夢もすごいと俺は思うんだけどな。
ため息をつきながらも2人をそのまま自由にしておくところが霊夢のいいところだよな。


輝識「いいのか?」
霊夢「別に。君が目覚めて嬉しいんだろう。そのままにしておこう。」


そう言いながらも俺の隣に座っていてくれる霊夢は優しい奴だと思うんだ。
霊夢は実は優しい奴で、理澄は天然で可愛い奴で、出夢はたまにやりすぎる奴だけど憎めない奴。
そんな奴らのそばにいれてよかった。


輝識「ありがとよ、三人とも。」


顔を上げると、三人が笑顔で俺に言った。
「当たり前だ」ってね。








匂宮の三人と絡んだ後、俺は大人な2人と喫茶店にいた。
人類最強、哀川潤と人類最悪、狐―――西東天。
そんな大人な2人と一緒にいるなんて、俺には珍しくもなんともなかった。


輝識「仕事の都合はないのか?潤も狐も。」


2人の前に座りながら率直に聞いた。
潤は請負人だ。
今も色んな依頼が殺到しているはずだ。
一方狐は、十三階段を使って裏世界の歪みを色々と処理している。
狐は、刹識に色々とねじ伏せられて世界の終わりを見ることに諦めがついたらしい。
それでも、2人が忙しいことには変わりはない。
それに今じゃあ、刹識の頼みで2人とも動いているはずだ。
もっと忙しいはずだ。


哀川「今日は大丈夫だ。明日の昼ぐらいからは忙しいな。クソ親父もな。」
西東「ふん。今日ぐらいは休息を得たってかまわないだろう。」


そう言いながらお茶を嗜む2人はとでも優雅で、絵になるような風景だった。
俺は片手に持った懐中時計を開いた。
それを見て潤が笑った。


哀川「相変わらず持ってんだな。それ。」


懐中時計を指す。
この懐中時計はいつだか潤にもらった懐中時計だ。
眠っている間も肌身はなさず持っていた。


哀川「それを持ってお茶を嗜む輝識、か。」
西東「お前1人でも絵にはなるが、黎織がいればもっと凄い絵になっただろうな。」


狐もそれを聞いて笑う。
そんな2人を見ると、大人っぽかった黎織を思い出す。


輝識「俺なんかじゃ、絵に、ならない。」
西東「『絵に、ならない』ふん。十分絵になっているとも。お前は崇高で美しさを持ち合わせていて、そして―――優雅だ。」


それを狐に言われるとは面白い。
笑いが止まらない。
笑いが止まらないから、笑いながら伝えた。


輝識「忙しいのに、ありがとうな。」


2人はその言葉に大人な余裕を見せ、微笑した。












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