「名前ちゃんお肉食べてる!?」
「食べてるよー!ありがとうお茶子ちゃん。てゆかいいのかなわたし。A組BBQに参加して」
「いいっていいって!食べな名前!」
「きゃーー響香ちゃんありがとうー!」
「足の具合は大丈夫ですの?」
「あっうん。だけど普通の靴は履けないから、クロックス借りた」
「……爆豪くんに?」
「うん」
「サイズが合うものお出ししましょうか!?」
「百ちゃんありがとう。だけど大丈夫。これでいいの」

「だけどあの時の爆豪くんすごかったよねえー!」
「あの時?」
「システムが正常になった瞬間に「名前!!」ってー!必死の形相で名前ちゃんを80階に迎えに行くんだもんー!」
「まるで映画みたいでしたわ……名前さんを連れて屋上へいらしたときも、庇うように抱き留めていて……」
「こっちが照れたわ」
「それ盛ってない?」
「盛ってないよ!」
「盛ってないとしても美化しすぎだよ…むしろわたしが屋上に行ったことによって足手まといになって申し訳ない」
「いやいや足を怪我して動けない状況で、倒れているとはいえ敵が二人もいる場所に一人ぼっちだよ!?私でも怖いよ!」
「てゆか名前が自分を置いてけって言ったんだって?かっこよすぎでしょ。ウチでも惚れるわ」
「名前さんの後頭部をしっかりと抱いて……庇うようにしていて……素敵でしたわ……」
「絶対盛ってるよね?」

「爆豪くんのとこ行かないの?」
「まあ離れたところで友達といるし。いいかなって」
「えー!」
「わたしがここでべたべたして冷やかされるのも嫌だろうし」
「えー!」
「そもそもあんた達何で付き合ってないの?」
「付き合わないよー」
「なぜですの!!」
「わたしは爆豪くんに釣り合わないからさあ」
「彼シャツ彼クロックスしといてさあ……」
「えっその上着も爆豪くんの?」
「確実にメンズでしょ」
「日焼け気になるって言ったら貸してくれた」
「サイズが合うものお出ししましょうか!?」
「百ちゃんありがとう。だけど大丈夫。これでいいの」


「爆豪お前彼女のとこ行かなくていいのかよ」
「だから彼女じゃねーわ!うるせえ!」
「彼女じゃないなら俺いっていい?」
「いいわけねえだろアホ面ぶっ殺すぞ!」
「超理論すぎねえ?」
「漢らしくねえぞ爆豪」
「うっせえな……黙って食えねえのか……」
「そういえば昨日、爆豪の彼女ってオールマイトのこと変な風に呼んでたよな」
「あー何だっけ?ヒツジさん?ラムさん?何かそんな感じ」
「アレだアレ!ヤギさんだ!」
「ヤギさーん!って言ってたよな。何で?」
「俺が知るか」
「オールマイト、ヤギが好きなん?」
「俺が知るか」


「八木さん」
「ああ、名前ちゃん」
「お肉持ってきましょうか?」
「いや、私はもう十分だ」
「お水は?」
「頂いてもいいかな?」
「どうぞ」
「ありがとう」

「戻らなくてもいいのかい?」
「はい。それより怪我は?大丈夫ですか?」
「この島の医療技術はとても進歩していてね。もう平気さ」
「それならよかった」
「……こんなところでやつれた男と一緒にいたら、君のいい人が心配するんじゃないか?」
「え?」
「その上着と靴。男物だろう」
「どうかな。わたしが輪から抜けたことも、きっと気付いてないですよ」
「そんなことはない。君は君が思う以上に魅力的だよ。少ししか見られなかったが、昨日のドレスもよく似合っていた」
「ほんとですか?」
「君らしいチョイスだと思ったよ。今日のシンプルなワンピースもいい。清楚で愛らしく、よく似合っている。だけれど清楚なワンピースにメンズのシャツを羽織って、クロックスっていうのが……」
「変ですかねやっぱり」
「いや……何というか……これを生徒に言うべきではないかなって……」
「えー聞きたい」
「………ひどくアンバランスで危うい。君のいい人は堪らないと思うよ」
「………え」
「セクハラで訴えないでね!訴えられたら勝てない!」
「そんなことしませんよわたし達友達じゃないですかー」
「悪い顔をしない!」
「冗談ですよ」
「………ほっ」
「そんなにあからさまにほっとしなくても」

「聞いたよ。昨日のこと。君も敵の襲撃を受けたそうだね」
「かすり傷でしたけどね」
「怪我は?」
「平気です。ちょっと引きずるくらい」
「それは何よりだ。……君は、足手まといになるから置いて行けと、そう言ったそうだね」
「はい。結局足手まといになっちゃいましたけど」
「君は立派なことをした。だけれど、自己犠牲的過ぎる」
「自己犠牲?」
「一般人は常に守られるべきだ。君は安全な場所へと避難させられるべきであった」
「それを言うならみんなまだ一般人じゃないですか。学生だし」
「そうだね。私もそう思うよ。本当は彼らに手助けしてもらうべきではなかった。何か事が起こらなかったからいいものの、取り返しのつかないことになっていたらと思うとぞっとするよ」
「………だけれどみんな、ヒーロー志望だから。身体が勝手に動いちゃうんだと思いますよ」
「そこが精神的に未熟なところだよね。短所でもあるが、長所にも成り得る」
「見て見ぬふりなんてできないんでしょうね。いずれヒーローになる人たちだから」
「………君は、」
「はい?」

「君は彼らの眩しさに嫉妬している。違うかい?」

「………メリッサさん」
「メリッサ?」
「彼女もわたしと同じ。無個性。だけど彼女もあちら側の人間です。見て見ぬふりなんてできない。個性があろうがなかろうが、誰かのために動くタイプ」
「………そうだね」
「わたしは、嫌な人間だなあって、思いました」
「どうして?」
「彼女は無個性なのに前を向いて、優しくて、捻くれてなくて、卑屈でもなくて。明るくてきれいないい人」
「………」
「わたしはあんな風になれない。嫉妬したんです」
「………」
「わたしは自己犠牲的な方法しか取れない。同じ無個性なのに、きらきら輝く彼女に嫉妬したんです」
「………君に胸を貸したいところだが、どうやら私はお呼びではないらしい」
「………え?」
「誰かはわからないが――君のいい人が、君を探しに来たようだ。そこの影に身を潜めている」
「………え」
「邪魔者は退散するよ。君の心の闇を晴らせるのは私じゃないからね」

(180811)