「いた!!」
「あ?」
「お!」

 A組の面々との集合場所にたどり着けず、迷ってしまったと隣の爆豪に正直に口に出そうか迷っていたところ、前方から歩いてきたのは爆豪の彼女(仮)であった。(仮)というのは本人同士が否定しているからつけてみた。俺と爆豪をじっと見た後、彼女は呟く。

「二人とも遅いって飯田が心配してたよ」
「マジか!みんな待ってる!?」
「うん、はやく行こ。てゆか何でこんなところにいるの?会えたの奇跡だよ……」

 どうやら俺たちは集合場所からかなり離れた場所にいるらしい。爆豪の彼女(仮)はため息を吐いたあと、先ほどから黙りきっている爆豪を覗き込む。

「爆豪くん?」
「………ンでもねえ」

 爆豪は食い入るように彼女を見つめている。上から下まで食い入るように眺めた後、ある一点で視線が止まる。その視線の先を追う。彼女の鎖骨だった。

「…………」
「え、なに?」

 白く真直ぐなそれを、爆豪は無遠慮に見つめている。確かに見つめたくなるほどに奇麗であるが、俺が見ていたら確実に殺される。隣の男に。俺はすぐに鎖骨から視線を逸らし、二人の前を歩く。

「行こうぜ!」
「爆豪くんどうしたの?」
「………別に」
「あ!切島くんそっちじゃないよ!」

 爆豪の彼女(仮)は小走りで俺の前を歩く。爆豪はその後姿をしげしげと眺めた後、一点で視線を止めた。その視線の先を追う。項だった。

「………」

 こいつ、案外普通の男なんだな。そう思い肩をバシバシと叩くと、怪訝そうな目を向けられた。

「彼女に何か言えよ!」
「あ?」
「綺麗だとか、似合ってるとか言ってやれよ!」
「………言うわけねーだろ」

 綺麗と似合っているという言葉は否定しないようである。否定しても嘘だと秒でわかる。男ならすれ違ったら誰もが振り返るレベルで綺麗だ。

「俺が何か言うことを、あの女も望んでねえ」
「そうなの?」

 確かに前を歩く彼女も、何か言われることを望んでいるような表情ではない。何でこの二人は付き合っていないのだろう。俺にはさっぱりわからない。

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「………完全に迷った」
「どこだよここ」
「緑がたくさんあってキレイ」

 完全に迷ってしまった。「こっちのような気がする」「いやこっちだ」「階段がある」「パーティーと言えば上の方だろ」などと適当に歩いていたのがいけなかったのだろう。気が付けば室内庭園のような場所に俺達3人はいた。爆豪の彼女(仮)は暢気に綺麗だと呟き、きょろきょろと周りを見渡している。その時であった。――前方から、見ただけで敵だとわかるような二人組の男達が歩いてくるのが見えたのは。

(180811)