俺のペアの大人しそうな女の子は、不安そうな表情をしている。俺は呟く。

「ボーリング得意?」
「に、苦手……」
「さっきの爆豪の彼女より?」
「あれくらい……だけどあの子は面白いから……」

 確かに爆豪の彼女は面白い。俺は不安そうな顔をしているペアの女の子――名前ちゃんの頭を撫でようとしたが、辞めておいた。さすがにいきなりボディタッチは引くようなタイプだろう。

「大丈夫だって!俺がフォローすっから!」
「上鳴くんに迷惑かけて本当に申し訳ない……ごめんね……」
「いいっていいって。楽しもうぜ。折角だから」
「う、うん!」

 むしろ女の子は下手なくらいの方が可愛いだろう。そう思い親指を立てて励ますと、名前ちゃんは笑った。

 あーーーーーーその顔めっちゃカワイイ。大人しそうで地味そうだなと思っていたが、やっぱりカワイイ。笑うとさらにカワイイ。普通にめっちゃ好みである。

「が、ガーター……!」
「気にすんな、俺がスペア出してやっから!」

 名前ちゃんは爆豪の彼女と同じくガーターであった。その様子を見て爆豪の彼女は口を開いた。

「同じだ!!ガーター!」
「他人の失敗を喜ぶとか悪魔かよ」
「失敗を喜んでるんじゃなくて仲間を見つけた喜び?名前ちゃん、今度一緒にコソ練しようね……」
「コソ練あったなら誘ってよー!」

 自分の彼女を悪魔呼ばわりする爆豪はぶれない。名前ちゃんも、爆豪の彼女と仲がいいのか明るい表情をしている。

「スペア!さっきと同じ展開だな」
「上鳴くんありがとうー!!」

 ボーリングが多少上手くてよかった。そう思い、名前ちゃんとハイタッチをする。名前ちゃんは楽しそうに笑っている。あーーーーーーーーやっぱりめっちゃ可愛い。この子彼氏いんのかな。

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「投げ方が悪いのかな!?」
「俺もフォームとかはよくわかんねえけど……」
「ちょっと調べてみる!」

 その後も名前ちゃんはガーターが多かった。スマートフォンを取り出し、名前ちゃんはボーリングの正しいフォームを調べている。見つけたようで、隣に座る俺に画面を見せた。

「これ!こんな感じみたい!上鳴くんもこんな感じ!?」
「え、」

 ―――距離が、近い。スマホの小さい画面を共有するのだから、近くなるのは当然だ。ふわりといい匂いがした。正直、ボーリングのフォームは全く目に入らない。

「あ、あー…言われてみれば、そうかも」
「やっぱり上手な人はフォームも奇麗なんだ……」
「いや俺も別に上手いってわけじゃ、」
「上手だよ!わたしのガーターも全部カバーしてくれるし!すごく頼りになる!」
「え」
「足引っ張ってばっかりで申し訳ないけど、上鳴くん優しいし、上鳴くんとペアでよかった」

 名前ちゃんは照れたように俯く。その様子が、ドストライクだった。ボーリングなだけに。違うか。馬鹿なことを考えながら、俺は呟く。

「俺、ボーリングよりダーツの方が得意なんだけど」
「ダーツ?」
「名前ちゃんやったことある?」
「ないよ」
「よかったら、これ終わったらやらねえ?ここって確かダーツも、」

 今日の会場はボーリングだけではなく、様々なスポーツができるようになっている。確かダーツもあった。そこまで呟いたところで、俺はがっつきすぎたのではないかと心配になった。

「あ、だけど嫌だったら!全然!」
「う、ううん。ダーツ、やってみたい」
「マジで?」
「教えてほしい。だめ、かな……?」

 だめじゃないです。その言葉は、爆豪の「さっさと投げろアホ面!」という言葉にかき消された。

(170625)