「じゃあ自己紹介からかな?」

 幹事である爆豪の彼女、名字名前ちゃんの声が響く。名前ちゃんに頭を下げて頼み込んだ合コン。四対四。場所はボーリング。カラオケより盛り上がるだろうと思った結果だ。目の前には経営科の女子たち。レベルたけーなと思いながら、俺はあまりじろじろ見ないように努める。

 このメンバーは全員、名前ちゃんの友人なのだろうか。それにしてはバリエーションが豊富だ。大人しそうな子、騒がしそうな子、普通そうな子。名前ちゃんはそれぞれ相性のよさそうな子を連れてくると言っていた。ということは、俺にあてがわれたのは誰なのだろう。騒がしそうな子だろうか。どの子も可愛いから、正直どの子でもラッキーである。

 一通り自己紹介を終えた後、チーム分けとなった。男女ペアになり、合計得点を競うらしい。チーム分けはどうするのか。勿論爆豪は名前ちゃんと組むのだろうが。

「あみだくじを作って来たの」
「さすが幹事!」
「できる女!」

 彼女の友人たちが合いの手を入れる。あみだくじは棒が3つ。やはり、爆豪と名前ちゃんのペアは固定らしい。

「よかったな爆豪、彼女とペアで」
「よくねーよこいつド下手だからな」

 狭い席でもないのに名前ちゃんと爆豪はカップルらしくくっついて座っている。爆豪が足を開いているからか、二人の膝は密着している。

「わたし超下手なんだ」
「散々コソ練に付き合わされたからな」
「ちょっと」 

 コソ練と鼻で笑う爆豪は、教室よりも何となく穏やかな気がする。最初からキレているのを想像していたのでよかった。大声を出されたら、彼女以外の女子はドン引くだろう。

「はい、じゃあペア発表しまーす」

 俺のペアは誰だろう。そう思い線の先をたどると、まさかの、一番大人しそうな子であった。

「じゃあボール取りに行こうか」

 騒がしそうな子は切島と、普通そうな子は瀬呂とである。俺はペアの女の子に声を掛ける。

「よろしく!まあ頑張ろうぜ!」
「う、うん……よ、よろしく……」

 俺の見立ては間違っていなかったらしい。確かに、彼女は大人しそうだ。

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「最初からガーターかよ!!!!お前才能なさすぎだろ!!!練習の成果はどうした!!!」
「やっぱりボールの重さがアレなのかな……」
「はァ!?!?」

 最初からガチギレである。爆豪・名前ちゃんチームから始まった1ゲーム目は、名前ちゃんによる華麗なるガーターから始まった。超下手というのは謙遜でも何でもないらしい。

「ば、爆豪くん、彼女に対しても怒鳴るんだね……」
「あいつはああいうやつだから……」

 俺のペアの子も含め、女子は全員ドン引きしている。爆豪は怒りに身を任せてボールを投げる。ピンが全て倒れる。結果、爆豪チームはスペアだった。ボーリングでも才能を発揮する男である。

「わー爆豪くんさすが!すごい!」
「お前が下手すぎなんだよ」
「わたしが全部ガーターでも全部スペアにしてね」
「当然だろーが」

 ナチュラルにイチャついている。さすがの爆豪も、彼女に褒められると満更でもないらしい。名前ちゃんは手元のボールを見つめ、呟く。

「もう少し軽いのにしようかな。取ってくるね」
「いってらっしゃーい」

 名前ちゃんはボールを抱える。爆豪は一緒に行くかと思いきやそんなこともないらしい。

「爆豪、一緒に行かねーの?」
「あ?行かねーよ」

 行かねーよと言った割には、食い入るように名前ちゃんを見ている。その時だった。二人組の男が、名前ちゃんに声を掛けたのは。

「………チッ、」

 見ている感じだとナンパのようだ。可愛いもんなあ。そう思っていると、爆豪は舌打ちをして般若のような顔をして名前ちゃんの後を追う。そして顔芸でその男たちを蹴散らした後、名前ちゃんの腕を引いて戻ってきた。

「名前、大丈夫?ナンパ?」
「一緒に投げよって言われた」
「えー!」

 彼女の友人たちが心配そうに気遣っている。名前ちゃんは爆豪の腕に腕を絡め、呟く。

「けど爆豪くんが助けてくれたから」
「お前が隙がありすぎんだよ」
「そんなことないよ」

 ナチュラルにイチャついている。俺も彼女欲しい。

(170625)