「合コン開いてくださいお願いします」 こいつにはプライドっていうモンがねーのか。そう思いながら、深々と頭を下げて自分の女に懇願するアホ面を見つめる。 「いいよ。人数は?」 「え、ええー!!マジで!?マジで開いてくれんの!?」 「ヒーロー科の男の子と合コンするって言ったらみんな喜んで参加すると思うよ!何人!?10対10とか!?」 「やべーなそれ!!合戦じゃん!」 自分を差し置いてアホ面と名前は盛り上がっている。イラついたのでアホ面目がけて個性を使うが、アホ面は全く怯まない。 「爆豪も来るだろ!?名前ちゃんが来るんだからよ!」 「あァ!?誰が行くか!」 「来ねーと名前ちゃんカワイイし誰かに取られるかもしれねーじゃん」 「はァ!?」 「大丈夫大丈夫。わたしモテないから安心して。爆豪くんはだるいから来ないって」 「誰が行かねーって言った!?」 「いやお前今誰が行くかって怒鳴ったじゃねーか」 「行ってやるわ!かったるいけどな!」 「情緒不安定かよ」 失礼なことを言うアホ面を爆破し、舌打ちをして目の前の女を見る。なんだか楽しそうにしてやがる。 「メンバーは誰?誰にするの?」 「そうだなー俺と爆豪と……切島!切島誘うわ!爆豪が暴れた時のために!」 「暴れねーわ!」 「切島くんって女子に興味あるの?」 「女子に興味ねえ男なんていねーよ」 アホ面は楽しそうにメンバーを考えている。 「飯田は?」 「いやアイツ絶対うるせーだろ誘わねーよ爆豪キレんだろ」 「確かに爆豪くんと相性悪いもんね。じゃあデクくんもナシ」 「緑谷いいやつだけど爆豪キレるもんな」 「キレねーわ!殺すぞ!」 「もうキレてるじゃねーか」 アホ面は教室内を見渡している。そして呟いた。 「瀬呂かな。アイツ空気読めるし爆豪キレねーし」 「瀬呂くんかあ。顔薄いし好みがばらけていいかもしれない」 「あいつなら初対面の女子とも話せるだろ。切島もたぶん緊張して最初は喋んねーし、爆豪はキレるじゃん?」 「だからキレねーわ!」 「そうすると俺だけが盛り上げるのも辛いし、瀬呂はたぶんいけるクチだ」 「優しそうだし穏やかそうだし、ああいうタイプが一番合コンではモテるかもしれない」 「マジで!?俺モテない!?モテない!?」 「上鳴くんはチャラついてるからさー‥…まあけどスタメン聞いたから!任せて!」 「任せて?」 名前は楽しそうに微笑む。もうこの話題には飽きたのでイラついていると、名前は俺の掌を掴む。何の真似だと思った。 「みんなと相性がよさそうな女子を連れてくるから!幹事として!」 「おお!頼もしいな!」 アホ面に微笑んだ後、名前は俺の指を見て呟いた。 「爆豪くん、人差し指ささくれてる」 「あ?」 「爪切りあるよ。切るね」 「あー」 「すげーナチュラルにイチャついてる……」 ; 「というわけで合コンはボーリングらしいんだけど」 「かったりいな」 「わたしはボーリングができない」 「は?」 「一人だけガーターなしでもいいと思う?」 「………お前何言ってんだ?」 ガーターなしとはこの女は何を言ってやがるのか。俺の心底引いた表情に、名前は俺の掌を握った。何の真似だと思った。 「だからコソ練するの!付き合って!」 「はァ!?コソ練だァ!?」 「こそこそ練習するの!痛ましい空気にならないために!」 「堂々とすりゃあいいだろーが!」 「合コンのために!?ボーリングを練習!?ちょっとガチすぎない!?」 「………」 「ほら納得した!だからコソ練付き合ってね!」 「ンで俺が」 「爆豪くん、ボーリングも上手じゃん?てゆかできないことないじゃん?だから」 「てめェ俺を煽てればいいと思ってるだろ!」 「……」 「図星かよ!!」 名前は目を細める。そして唇を開く。 「デートもできるしボーリングも上手になるなんて、一石二鳥だよ」 「はァ!?」 「だからボーリングデートだよ。コソ練じゃなくて。ボーリングデート」 「………」 (170625) |