・私と俺との日常番外編
(ヒットマンのその後)
―君と俺と狙う者―
「おいダメツナ。お前、前に読心術が効かない女が居るって言ってたな?
ソイツとの仲は良くねぇのか?」
「お前、その渾名好きだな…」
「話をそらすんじゃねぇ…」
ジャキッ…、と黒い銃口が俺に向けられたのを視界の端に捉えた。
全く短気な自称家庭教師様にヤレヤレと勉強を一時中断。
帰宅後から妙に機嫌の悪いリボーンに向き直った。
「で、ソイツ…神城がどうかしたのか?」
「訊いてんのは俺だ。
サッサと質問に答えろ」
ホントに短気なヤツだ、と思いながら俺は否と答える。
するとリボーンはあからさまに「チッ」と舌打ちした。
「使えねぇヤツだな…」
「お前、オレの外面知ってるからその渾名使ってんだろ…?」
「“ダメツナ”なんかに期待はすんなよ」と言えば再び舌打ちが聞こえた。
全くホントに扱いづらい赤ん坊だと思う。
つか、赤ん坊の可愛いらしさが皆無だ…。
と、そこまで考えて俺は再びリボーンに背を向け中断していた勉学に勤しむ。
イヤホンを着けてお気に入りの曲を流す。
そこはある意味隔絶された空間。
俺の数少ない憩いの場…。
それもこのクソ餓鬼によって壊される…。
キュインと音が鳴り、一発の銃弾が俺に向かい放たれる。
それに俺は手にしていたシャーペンに炎を纏わせ、俺目がけて翔んでくる弾を勢いを殺さずにリボーンへと弾き返した。
キンッと金属音と共に宙を舞う黒い拳銃。
そして空中で綺麗な放物線を描いたソレは、吸い込まれるように俺の手へ……。
狙ったこととはいえ、上手く俺の手元にやって来たリボーンのソレにニヤリと笑みを浮かべる。
一方獲物を奪われたリボーンは悔しそうに俺を睨んでくる。
その鋭い余裕の無いような眼光に、思わず溜め息を吐きながら肩を竦める。
「リボーン。お前一体何にそんな苛ついてんだよ?」
「…………」
沈黙するリボーンに「ハアー」と再び溜め息。
ホントにコイツ、今日は何時にも増して行動、言動が奇怪だ…。
「あの女…」
「何だ、会ったのか?」
「あの女変ダゾ…」
深刻に話すリボーンの言葉に顔を顰める。
確かにアイツは可笑しい…。
だが、
「いや、危険視する程じゃねーよ」
俺は首を左右に振る。
大丈夫だ。
未だに苦手な神城だが、アイツからホントの意味で嫌な感じはしない。
この血が言っているのだ間違いは無い。
「神城は確かに何処か他のヤツとは違う。
けれどマフィアには関係ねーよ」
そう、関係無い。
アイツの存在に気付いた時から今迄、アイツからマフィア関係の影は見受けられない。
そっちに関しては問題は無い。
ただ…
「一般人だけど…、普通では無い」
そう、普通ではないんだ…。
餓鬼の頃から妙に子供っぽく偽っている。
まるで俺のように演技をしているようだった…。
否、しているんだ…。
年相応な子供の演技を……。
と、ここで気付くリボーンの嫌な笑み。
先程の不機嫌丸出しな顔から何かを企むようなニヤリ…、とした妖しい笑みが浮かんでいる。
それにゲッ…と顔を顰める俺を無視して、あのクソ餓鬼は有ろうことか何とも有り得ねぇ戯れ言をほざきやがった…。
「おいダメツナ、ソイツお前のファミリーに入れるからな」
「ざっけんなッ!!」
―君と俺と狙う者―
(アイツなんて面倒なヤツに気に入られてんだよッ!)
急に機嫌の回復したリボーンを尻目に、俺は今ここには居ない神城に向かって心中で悪態を吐いていた…。
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