町の外れにある廃屋に描かれた魔方陣……もどき。
一応全体はちゃんとそれっぽいのに、 サークルの端っこにある白蘭のピースサインの似顔絵とか、激しく間違っていると思う。
それの上であたかも魔王召喚の生け贄の如く両手両足を縛られた私が叫ぶ。
「やっぱヤダ!
こんな怪しい儀式してまでマンガの世界なんて行きたくない!!」
「ダメだよ蓮ちゃん、我が儘言わないの」
「人間として色々無くしそうな実験に駆り出されて我が儘もナニもないわ!」
私、正論。
なのにニコニコと笑うだけで歯牙にもかけないビャク兄とか鬼。
「じゃ、始めるよ〜」なんて呑気に宣ったのだから瞬時に殺意が湧いてきた。
こんなふざけた魔方陣で異世界に飛ばせるもんなら飛ばしてみやがれ!
………なんて思っていたら、ホントに陣が光り出したのだから世の中色々間違ってる。
しかも一番輝きが強いのが白蘭の似顔絵ってどういう事?
…ピースサインの白蘭のそれが、光りながら浮かび出してふよふよと私の目の前にやって来たのだから恐怖以外の何物でもない。
可笑しい。
有り得ない。
ふざけてるッ!!
その発光白蘭生首仕様がウィンクした。
………私は絶望した。
「おや、帰ってきたんですね」
気づけば目の前には紫紺の髪とオッドアイの眸を持った少年が嘲笑を浮かべて私を見下ろしていた。
ろ く どう む く ろ
ー私と貴方と泡沫の影ー
私の掠れた声に、少年の笑みが深まった。
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