「ハァ…」
ダメツナとして押し付けられたゴミ捨てを終え、俺は空のゴミ箱片手に溜め息を吐いた。
(たくっ…、“ダメツナ”なんて存在しないっての…)
俺がそう心の中で毒づくと、誰かが背後から近付いてくる気配がした。
「何で、そんな事してるの…?」
「うあぁっ!!!」
いきなり声をかけられて驚くふりをしながら、俺は珍しいヤツが話掛けてきたもんだ…と思った。
「ねぇ、何で…?」
「あ…、えっと、神城……さん?」
子首を傾げながら、俺の驚いた声(演技だけど)に少しも反応せずに同じ問をしてきたのは、何の縁か、小一からずっと同じクラスの神城蓮だった。
「…沢田君…?」
「あ、いや…、ゴミ捨て頼まれて…」
表は気弱なダメツナで話すも内心ではチッと舌打する。
はっきり言って神城は嫌いだ。
深い繋がりではないが、こうも縁が繋ぐと何かあるのではないかと疑ってしまう。
得意とする読心術が何故かこの神城にのみ効かない事もその理由の一つだ。
“普通”の子供に心を閉ざすなんて事が出来るだろうか?
出来る筈がない。
信用出来ないんだ、彼女が。
だからと言って、それをダメツナでだす程俺は馬鹿でも愚かでもない。
ダメツナが女子に声をかけられた時の態度で僅かに頬を染め、視線を泳がせる。
そう、俺に必要ない。
けれどどうしても必要なダメツナの演技で。
「…あ…、…あの、…神城さ「…疲れない?」えっ?」
俺の声を遮ったのは分かりきった答えを問う言葉の羅列。
それに苛つく思いとは裏腹に、俺は諦めた顔つきを作って律儀に答えた。
「いや、もう慣れたし…。
それに俺は……、…ダメツナ…だから……」
「大変だね」
「いや、何時ものことだし…」
俺が苦笑すると、神城は「ふーん…」と気のない返事を返す。
その態度に苛つきは積もる一方だ。
俺はいい加減こいつから離れたくて、適当にあしらって帰る為行動を起こそうとした直前、神城は俺の持っていたゴミ箱を突然俺から奪い取った。
「え?神城さん!?」
意味の分からない行動に驚いている俺の呼びかけに応えず、彼女は颯爽とその場を去っていった…。
―君と俺との出逢い―
それは運命の始まり。
※スレツナです
prev next