「やっぱりヤダなぁ〜。
このまま蓮ちゃんを綱吉くんにあげちゃうの…」
「何言ってるのよ白蘭」
「というか、俺、これから白蘭達の事お義兄さんって呼ばなきゃいけないのか…?」
「凄く複雑なんだけど…」と、苦虫を噛み潰したような表情になる綱吉君に、白蘭は「ひっどいなぁ〜」とケラケラ笑っている。
そんな二人の様子を見て、何だかとても嬉しくなった。
ここは…、あのマンガのような未来じゃない。
平和で、優しい世界…。
「さて、と。
はいはい綱吉くんはもう退場〜。
エスコートは僕に任せなさい」
「…………スッゲー不安…」
ニコニコと笑顔の白蘭に背中を押されて、綱吉君は引きつった表情で渋々控え室を出ていった。
綱吉君を追い出した白蘭は、一仕事終えた、といった様子でいい笑顔を浮かべちゃっている…。
「白蘭…」
「さっき言ったのは本心だよ。
ホントは可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い可愛いかわ…―――「どれだけ可愛い連呼するのよ…」」
呆れたように溜め息を吐けば、白蘭は「そうだね」と朗らかに笑った…。
私の、自慢の兄…―――。
「今、“こっちの”僕は居ないけど、彼も同じ事を訊きたがっていたから訊くね?
………蓮ちゃんは幸せ…?」
何だか急に畏まった白蘭に何事かと思えばそんな事。
それに私は思わず苦笑して即答した。
「幸せじゃないよ」
「?」
「“まだ”、だけどね」
「…………蓮ちゃん…」
だってホントの事。
私はまだ“こっちの”白蘭に「おめでとう」って、言って貰ってないし、綱吉君とだってまだ…。
だから“まだ”幸せなんかじゃない。
「ほら、ボーとしてないで行くよ白蘭!」
「待って…」
時間が差し迫っている。
だから急かしたというのにこの男は…と思ったけど、真面目そうな白蘭の顔に思うだけに留めて耳を傾けた。
「ねぇ蓮ちゃん。
なら、蓮は幸せに“なれる”?」
真っ直ぐな白蘭の眼差し…、それに、私は笑って返した。
「勿論!
幸せになってみせるよ、
“ビャク兄”!」
「!、…そう、だね」
やっと呼べた愛称。
それに嬉しそうな笑顔を浮かべて、ビャク兄は私に「お手をどうぞ?」なんて言って手を差し出してきたから少し…笑っちゃった。
ビャク兄、私、今から幸せになるよ。
変革したこの世界で、ビャク兄達や綱吉君達と一緒にね?
「蓮…」
さぁ、神の前で私を待つ貴方の隣に並んで、同じ指輪を付け合って。
そして…
私と
俺との
永遠を誓うんだ
End