神城蓮が消えた。
学校からも、この町からも…。
結局、俺は折角自覚した恋も伝えられぬまま、そうして10年の時が過ぎたんだ。
「まだんな事してんのか…」
「迷惑はかけてないだろ?」
「ハッ!何処がだ。
獄寺のヤツなんか、お前を心配し過ぎて心労で倒れかけてたぜ?」
「隼人は少し過保護過ぎるだけだよ」
そう苦笑すればリボーンは「ダメツナが…」と呟いた。
それに更に苦笑を深める。
今回ばかりは事実なので認める他ない。
「そうだね。
結局俺は、10年たっても蓮を見付けられていない…。
本当にダメツナだな」
「自覚してんならアイツを探すのはもう止めろ。
蓮はもう居ねぇんだ」
「無理だよリボーン。
蓮を諦めるなんて」
にっこりと笑ってみせれば、そんな俺にリボーンは再び舌打ちをし「ダメツナが:と同じ台詞を残して執務室を後にした。
俺はそんなリボーンに深く息を吐き出し、腰掛けていた革張りの椅子に身体を埋める。
「蓮…」
そっと、愛しい人の名を口にする。
そうだ。
彼女はもう居ない…。
分かってる、分かってるんだ…。
そして、俺が…。
「もう直ぐ…死ぬってことも…」
ミルフィオーレとの戦いの激化に伴い、俺の死は必要な事となった。
そうしなければならないんだ…。
恐怖が無い…と言えば嘘になるがどうしようもない。
ただ、心残りがあるとすれば…。
「…蓮ッ」
何度も叫び、何度も求めた。
けれど、傍には居ない…。
(なぁ…蓮…)
ツゥ…と流れ落ちる滴。
頬濡らすそれに自嘲の笑みを浮かべながら、俺は決して伝えられない言葉を紡ぐ…。
愛してる…
―君と俺と願う事―
もし叶うならば
君にこの想いを伝えたい…
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