私と貴方と霧の君




フッ…と、気付けば私は広い高原のような場所に居た。
おや?と、首を傾げる私の耳に届いたのは 「クフフフフフ…」という独特の笑い声。

この笑い方は…。




「六道……骸…」

「クフフ、正解です」




スゥ、と私の前に現れた彼は何が可笑しいのだろう。
ずっとクフクフ笑っている…。

と、いうかぶっちゃけ…。



(引くわ…コイツ…)

「クフフ、やはり僕らを知っているのですね?」

「……知っていること知っている貴方の方に私は驚きだけどね…」




そう厭味を返してもコイツはあの胡散臭い笑みで流すのみ、全く効果は無いようだ。

まぁ、効果の期待なんてはなからしていないけど…。




「こんな所に連れ込んで何の用? 負け犬さん?」

「ほう、何でもお見通しですね。 異端者さん?」




お互いに笑みを携えて毒の吐き合い。
内心、“異端者”の言葉に揺さ振られながら…。




「クフフ、そうですよ。
貴女は僕らとは違う、正真正銘の“異端者”だ。
そうですよね?
異世界の住人さん?」

「……二度目だけど、何で貴方が“それ”を知っているの…」




私に読心術は効かない。
綱吉君にだって話していない。
なら何故コイツは…。




「“見ました”からね…。
貴女の過去を」

「私の…過去…?」

「そう、貴女が大事な“彼”にまで隠している重大な過去。

僕も知りませんでしたよ。
10年後の綱吉君が死んでいるだなん…「言うな!!」」




堪らず叫んだ私に彼は嘲笑を向けてきた。




「何故?
事実ですよ? 貴女が彼らを見捨てているのは」

「ちがッ…」

「“巻き込まれたくない”
“傍観者で居たい”
そんな貴女が見捨てたのですよ…“彼”を」

「ち…がぅ…」




カタカタカタ…と震える身体、渇く喉、頬を伝う冷たい汗…。
五感が、全身が、彼の言葉を拒絶する。

けれど…




「耳を塞いで逃げ出すのですね?
そうですよね。
何せ貴女は、“彼ら”よりも自分の方が大事なのですから」

「ち、が…」

「クフフフ、どうですか?
さぞ気分の良いことでしょう。
僕は今復讐者の刑務所内ですよ。
貴女の知る“物語”通り」

「…ゃ、めて…」

「貴女一人安全な場所で高見の見物。
戦う僕や“彼ら”を見て「あぁ、物語の通りだ」とでも言うのでしょう?」

「ゃ…」

「そして“彼”が死んだ時も貴女はこう言うのですよ「やっぱり」…と」

「ゃ…だ……」

「クハハハハッ!
貴女が沢田 綱吉を殺すのですよ!」

「イヤーーーーーッ!!!」
































―私と貴方と霧の君―





真っ暗になる視界の中で、私はただ謝罪することしかできなかった…。








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