・君と俺との日常番外編
(帰り道の途中で)
―私と貴方と呼び方と―
「神城!」
帰宅途中に名前を呼ばれ 立ち止まってそちらを見れば、ここ最近親しくなった沢田君の姿。
「今帰りだよな?」と隣に立って訊いてくる沢田君に「そうだよ」と返して二人同時に歩きだす。
「たくっ…、それでリボーンのヤツ…―」
「あぁ、それは大変だね…」
本当に。
最近、私達二人では恒例となったリボーン被害の報告と愚痴の溢し合い。
今日も今日とて、沢田君の話を聞く限り、何故誰もリボーンの奇行を疑問に思わないのだろう?、と不思議に思う。
「というか、普通はあり得ないよね?」と私が思ったことをそのまま口にすれば、沢田君はまるで救世主を見るかのように私を見てきた…。
ああ、うん。
…今迄君の周りには、君の不幸を分かってくれる人は居なかったんだね…。
漫画でも描かれていたし、そしてこの沢田君の縋るような眼差しで気付く沢田君の周辺状況に内心合掌。
「そう言えば私もリボーン君の所為で暴くn…コホン…雲雀先輩に絡まれたことがあったよ」
言いそうになってしまった言葉を 言い切る前で何とか止め、適当に誤魔化す。
そのまま何事も無かったかのように 「ホント迷惑極まりないよねー」と言えば憐れんだような沢田君の眼差し。
その視線を受けて、もうこの際だと「だって暴君じゃん」と開き直る。
と、更に憐れんだように見られた。
いや、だって事実でしょ!
なんて思っていれば、もう目の前には何時もの別れ道が迫っていた。
それに少々がっかりしつつ (何だかんだで沢田君との会話は楽しい)「じゃぁ!」と言って別れようかと思えば、まさかの沢田君からのお家へのお誘い。
いきなりのそれに首を傾げてみれば、沢田君が苦笑しつつ訳を話してくれた。
…どうやら彼は本日、一人淋しくの夕食らしい。
そんなことを言えば、「やっぱり来んな」と言われるのは目に見えているので、読心術が私には効かないらしいことをいいことに、心の中で呟く。
まぁ、しかし…。
今はそんな事どうでも良い。
ガシリッ!…と、沢田君の両手を強く掴む。
そんな私の行動に沢田君が困惑しているが今は無視だ。
それより私には大事な事がある。
「食費浮くぅ〜♪」とその大事な事を口に出せば、沢田君は憐れみの目で私を見てきた。
ちょっと!
一回分の食費だって、一人暮らしには重要なんだからね!!
思いはしたが 言葉には出さず、私は沢田君からの「お前…、ホントに苦労してんだな…」と言う言葉に、偽りの無い本心と笑顔を返した。
その時の沢田君の驚いたような顔に首を傾げた私が自分の言った言葉を振り返ったのは、沢田君の家に着いてからだった。
―私と貴方と呼び方と―
「蓮は今日、夕飯何食いたい?」
沢田君宅にて、沢田君からの突然の名前呼びに ドキリ…、と跳ねた心臓にびっくりしつつ、「沢田君?」と驚いたように問えば、「あれ? さっきみたいに名前で呼んでくれないの?」と、ニヤリ顔で訊き返された…。
そこで気付く、帰りの自分の大胆発言 名前呼び (家人が居ない家に異性を誘う綱吉君の発言の方が大胆なのだが…)に、私は顔に熱が集まるのを確かに感じた。
※ヒロイン、ツナを名前呼び!
タイトルの“呼び方と”には続きがあって“動き出す心”が続きます!
まぁつまり、呼び名をきっかけに夢主とツナの関係の変化が始まると言うことですね。
お互い意識し始めます!
prev next