コンコン

控えめなノックの音が聞こえて俺の返事を待たずして扉は開かれる。そこにいたのは予想通りの王子様で。何か企んでいる様な表情で俺に近寄ってくる。逃げようとしてもこの部屋に入り口は一つだけ。まぁ、好きにさせときゃ満足するだろとテレビに視線を向けた。


「タッツミー」

「あー?」

「相変わらず汚いね、この部屋」

「片付けてくれてもいーのよ」


ジーノはがさがさと俺の周辺のものをどけると定位置である俺の後ろへと座る。肩に首を置いて、手は俺のお腹に回して座るのが好きらしいジーノは満足そうにふぅと息を吐いた。くすぐったいって言ってもやめねぇしとりあえず声を出さないように唇をかみ締める。それに気付かないジーノは俺と同様にテレビに視線を向けた。


「ねぇ、タッツミー」

「なに?」

「タッツミーは膝枕したことある?」

「は?」

「膝枕だよ。誰かにしたことあるのかい?」

「いや、俺男だし。されたことはあってもしたことは・・・」

「・・・!されたことあるのかい!?」


非常に失礼極まりない質問に俺はむっとする。まぁ、俺も男だし35年間生きてきてるし?膝枕ぐらいされたことくらい・・・ない。心の中でくそー!とか叫びながらジーノの方を見ると王子様らしからぬ表情で俺を見ていた。過去なんて気にならないよ!なんて普段言うくせにされたことあるって言っただけでこれかよ、とため息を吐いた。


「でも、したことはないんだね?」

「あったりまえだー。」

「じゃあ僕の一生のお願い」

「お前の一生のお願いは何回あるんだよ」

「膝枕してくれない?」


無視かよ、っていう言葉は飲み込んだ。俺ってば大人だから。とか言ってる間に後ろにいたジーノが立って俺の腕を引く。あせっている間にも俺は立たされてベッドへと座らされた。そこから先はもう想像通り俺の返事なんか待たずして膝の上に王子様の頭が乗せられていた。


「おい」

「うーん、ちょっと硬いけど・・・まぁいいか。おやすみタッツミー!」

「ちょ、待て!おいっ!」


言いたいことだけ言うとジーノは目を閉じてしまった。ちょっと、俺まだDVD途中なんだけど。結局そんなこと言っても王子様には通じない。諦めてリモコンを手に取りテレビの電源をオフにする。そのままジーノの寝息だけが部屋に響く。今日は疲れていたのかすぐに寝息が聞こえてきたジーノに苦笑しながら髪に手を通す。こいつの髪はいつもさらさらでいい香りがする。髪を梳いたのがくすぐったかったのか少し身じろいだジーノの表情が思っていたより穏やかで少し笑う。そんなジーノが愛おしくてたまらなくて、額にキスをした。


「おやすみ、ジーノ」




あなた、充電中。



(・・・愛してる、よタッツ・・・)
(寝言まで俺のことかよ)


110311
twtrお題「膝枕で寝る」
ジーノはタッツミーの初めてが全部欲しかったんです多分←
とりあえず口調模索中です;;

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