鼻を小さく啜って布団を頭まで被る。真っ暗でなんの音もしない環境で一人ベッドで丸くなる。一人で練習も行けずに丸まってるのにはもちろん理由がある。そう、風邪を引いたから。いっつも監督に汗かいたらすぐに着替えろとか言われてたのに忘れててそのまま寝てこうなった。 「へ、くしっ」 また鼻をぐしぐしと拭って丸まる。風邪を引いたと電話で言った時の監督の怒りようはもういつもの監督からは想像できなくて思い出しただけで泣けてくる。情けないなーしんどいなー 「淋しい、な」 「風邪なんか引くから」 「え!?」 ガバッと起き上がって声がしたほうに顔を向ける。そこには電話口で怒ってた監督が立っていた。スーパーの袋ががさがさと音を立てて床に放置されて監督を俺を抱きしめた。 「か、んとく」 「二人きりの時はどう呼ぶっけ」 「達海、さん」 ぎゅっと音がしそうなぐらいに強く抱きしめられて頭を撫でられる。達海さんははぁ、と溜息を吐いて俺から離れた。けれど俺がそれを拒んで離れる事はなかった。 「ごめんなさい」 「俺言ったよな」 「ごめんなさい」 「…はぁ、もう怒ってないよ」 「達海さん」 今度は俺から達海さんに抱き着いた。達海さんに怒られるような事をしたのは俺で怒られて当たり前なのにやっぱり怒られると泣けてきてしまう。それをごまかそうとして抱き着いたけれどばれていたようで達海さんの指が俺の目元をなぞった。 「泣くなよ、椿」 「は、い」 「もー心配したんだからなぁー」 「すいません」 「俺を心配させた罰としてちゅーしろ」 「え!?」 達海さんの顔が近くに来て本気で言ってる事がわかる。でも俺、風邪引いてるしなんて考えてたけど達海さんの唇を見たらなんか全部吹っ飛んで導かれるようにキスをした。 「椿顔真っ赤ー」 「か、風邪のせいっス」 「まぁそういう事にしといてやるかぁ」 そういって頭をまた撫でられてそのままベッドの中に入れられる。離れたくないと思ったけどまず風邪を治さないといけないしなんて考えてたら額にキスをされた。 「どんな顔してんだよ」 「え…?」 「淋しい離れたくないって顔に書いてある」 「うあっ」 小突かれて顔を手で隠す。恥ずかしくて、でも本音で。指と指の間からちらり、と達海さんを見た。 「早く治せよ」 「うす」 「お前いないと俺やる気でないんだからなー」 笑いながらそう言われてどきっとした。ふわふわして飛んでしまいそうな頭で早く治して元気に走り回ろうと決意した。 ちょうどいい、LOVE SICK 120118 |