ソファーで隣に座っているおじさんをちらり、と見る。携帯の画面を見つめ指は忙しなく動いている。娘に何か買ってやるだの言っていたから通販サイトでも見ているのだろう。僕はただ何をするでもなく出されたコーヒーを見つめていた。


ぶつぶつと呟かれるこれでもない、それでもないという言葉に鬱陶しさを感じながら手を伸ばした。コーヒーに?いや、おじさんに。




「ちょ、なんだよ」
「携帯の方見ててくれて結構です」





膝に置いた手を少しずつ上へとずらしていく。携帯を見ていた瞳が僕の方を見つめている。焦ったような表情が面白くてどんどん手をずらして少し膨らみがある所へと手を移動させた途端に腕を捕まれた。





「何するんです」
「いやお前が何してんだよ!」
「別に。触ってるだけです」
「それ世間では痴漢って言うんだぞ」
「じゃあ痴漢してます」
「認めんなよ!」






捕まれた腕を引き寄せられて口づけを交わす。最初は触れるだけだったのがどんどん深まっていく。途中で眼鏡を外されてしまいぼやけた視界の中でおじさんだけがただリアルに映っていた。





「ふぁ、…あっ」
「バニーちゃん可愛いねぇ」
「な、に盛って…」
「構って欲しいからあぁやって触ってきたんだろ?おかげで、ほれ」






また腕を捕まれて先程僕の手が目指した場所に触れさせられる。そこはすでに硬度を増していた。何となく恥ずかしくなって視線を外すと顎を掴まれ視線を無理矢理合わさせられる。






「ちょ、」
「責任取ってくれんだろ?」
「なんで僕が」
「俺を興奮させたのがお前だから」






ギラギラとした肉食獣のような瞳にあぁ、この人は虎だったなぁなんてふざけた考えが過ぎる。ということは僕はニックネーム通り、兎ちゃんってわけだ。自分で考えたわりに可笑しくなって少し笑った。






「なぁに笑ってんだぁ?」
「いえ、別に」
「変なやつだな」
「ほら早く食べないと逃げちゃいますよ」






首に腕を回して舌で顎を嘗めあげた。それにごくり、と喉を鳴らした肉食獣に今から俺は食べられるのだろう。あぁ、兎になるのも悪くはないなと思いながら身を任せた。







DARLIN'








110509
もう逃げられない場所まで
運んでって 連れてってよ




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