私は休日に本屋にいた。
見ている本は勿論、月バス。
キセキの世代が特集されている。
いつものごとく、雑誌を買うことにした。
と、商業BL漫画2冊と、お姉ちゃんに頼まれた女性ファッション誌。
ここの本屋は比較的、学校からも家からも遠い。
商業BL本と、月バス本を買うのを誰かに見られたらアウトなので、私は家から1時間かけてここに来ている。
そして一番上に女性ファッション誌を持ち、レジに並んだ。
今日は日曜日だからかすごく混んでいる。
すると私は後ろから肩を叩かれた。
待て待て。
誰だ、知り合いか。それともなんか落としてそれを拾ってくれた誰か、か。
しかし私の前に並んでいる人は、私の後ろを見上げ、ている。
見上げている、という事は背の高い人、まして肩の手の感触からして、これは絶対男だ。
ってなると...
後ろをみる、そして前に戻す。
ああ、緑間っちだった。
やられた。
しかも緑間っちの後ろ一瞬だが、黒子っちを見つけた。
本を握る手の汗が、表紙の高野様に濡れてしまう。
「何、無視をしているのだよ」
「緑間くん、友達ですか?」
「ああ、クラスメートだよ。」
「こっちを向くのだよ。」
と私の肩をつかんだ。
何それ、こんな強引な緑間っち知らない知らない。
『あっ...緑間くん、じゃない。それに、後ろの子は?』
「あれ、僕の事に気づきましたか?」
はっやらかした。
一般人は黒子っちの事見えないもんね、しかも背の高い緑間くんの後ろにいるのだからか気づかないだろう。
しかし、私はキセキの世代センサーを発動してしまった。
『うん、普通気付くよ。』
「...そうですか。初めまして、黒子、と言います」
『ああ、よろしく。みょうじです。』
一度だけ聞いたことがある。
黒子っちは変に感がいい、と。
「で、みょうじ、意外だな。そういう雑誌を読むとは思わなかったのだよ。」
「緑間くん、それは失礼ですよ。」
『ううん、これはお姉ちゃんのだから。』
「そうか、他にも何か買うのか」
『ああ、うん、まぁ。』
「何なのだ?」
『あーなんか韓流の雑誌...。』
早く私の番になってくれ、という想いが通じたのか一番向こうの列が空いた。
よっしゃ、あそこならどんな本を買っていようがバレない。
『じゃあ、また明日学校で。』
そう言い、急ぎ足で向かった。
「ブックカバーはご利用ですか?」
『あ、はい。お願いします。』
「少々、お待ちください。」
そうやって彼女の手元を見た。
誰がどう見てもBL漫画だ。
だから私はいつもブックカバーをかけてもらっている。
すると隣のレジに黒子っちがやってきた。
えっ
そう思い、店員の手元を見ると、なかなかブックカバーをかけるのに試行錯誤している。
名札を見れば、研修生、と書いてある。
そして早くしろ早くしろ、と念じていたら、
「バスケ、興味あるんですね。」と、言われた。
『ああ、これは、おと、弟が、バスケ、好きで、うん。』
噛みまくったし、弟なんかいねーよ。
「そうですか。」
「お待たせいたしました。ありがとうございました。」
そう言い、店員は私に本の袋を渡してきた。
本当にお待たせしたよ、と思いながら、私は黒子っちに、「さようなら」だけ伝え去った。
次からあそこの本屋はやめよう。
fin