8. あの子の彼氏
なまえと俺と真ちゃんは同じクラスだ。
いつも3人で行動している。

第一印象は、とりあえず、変な子、だった。
でも一応、この女がキセキの世代のいた帝光学園バスケ部のマネージャーをしていた、という事に驚いた。

そして、俺たちのマネージャーになっても、なまえの仕事ぶりはよかった。
どうやら彼氏がいるらしい。誰かは知らないけど。
一度、どんなやつか聞いてみた。

『悪魔の子』

の一言で返された。
何だよ、悪魔の子って。



で、気づいた。
真ちゃんはなまえの事が好きだという事に。

あの堅物真ちゃんが、なまえを好きだという事には目を見張ったが、なまえなら理解できる。
俺ももし、彼氏がいなかったら好きになっていたかも、と思う。


ある日、部活中に見渡すと真ちゃんとなまえがいない。
部室で泣いている声が聞こえたから覗くと、真ちゃんに抱きしめられながら泣いているなまえの姿があった。

俺は思った。
彼氏彼女の関係でなくても、あの二人には、二人だけの世界があって、誰も入れないんだろうなぁっ、って。
それでも少し、あの二人の関係が羨ましく思えた。


そして初めてなまえが、彼氏といる光景を見た。

土曜日の練習が終わり、皆で門へ向かって歩いているとなまえが急に前にかけ出していった。
そして門に立っていた、知らない赤い髪の男に抱きついた。
俺は急な事に頭がついていけず、真ちゃんの方へ向くと、すごく切ない表情をしていたから、ああ噂の彼氏か、と理解できた。


『征十郎!会いたかった..。てか、なんでこっちにいるの?』

「さっきなまえが電話で話した時に元気がなかったから、こっちに来たんだよ。」

『征ちゃーん!!!』

「征ちゃんはやめろ馬鹿、あ、緑間。久しぶりだな。」

「ああ、赤司。相変わらずだな。」

「じゃあ、なまえは拉致させてもらうよってことで明日の練習はおそらくこの子、休むから」

『ぎゃ!征ちゃん変態!』と言いながらなまえは彼氏の腕をバシッと叩いた。

「黙れ、ほら行くぞ。」

『へーい、じゃあお先に失礼します!お疲れ様でーす!』

そう言って去っていく彼女は、今までに見たことがないくらい嬉しそうな顏をしていた。


「真ちゃん、帰りにマジバよろっか。俺がおごってやるよ。」

「...ああ。」

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