いちばんすてきなえがおでわらった




一番楽に死ねる方法はなんだろう。そう考えた俺は互いに刺し合う、という結論に至った。決して楽な方法ではない。だがどうせ死ぬなら好きな奴の手にかかって死にたかった。


「ほな謙也、いくで」
「おん」


誰もいない放課後の教室で俺と謙也は向かい合う。手には家庭科室から拝借して来た包丁。
どうしても財前を呼びたいと言っていた謙也には「財前には第一発見者として、この教室に来て貰おう」と説得し、今から5分にメールが送信されるようにセットしてある。

包丁は時間がなく、一つしか持って来られなかった。最初に俺が謙也を刺し、それから謙也が俺を刺す。そういう計算だ。

どうせ殺すなら一思いに一発で殺してやろう。そう考えた俺は謙也の心臓目掛けて包丁を突き立てた。


いちばんすてきなえがおでわらった


謙也の心臓の音が止まり、後ろからメールの送信された音がした。
さぁ次は俺の番だ、という所になって気がついた。


謙也が死んだ今、誰が俺を殺してくれるんだ。



10/10/31

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