しあわせなのにもっとほしいの 彼のモノが弾け俺の中を満たしていく。この感覚には、幾度となく身体を重ねていると言うのに慣れることはない。 びくびくと腰が震え、口からは喘ぎ混じりのため息が漏れる。酷く耳を塞ぎたくなるのだが、それは両手首を抑えつけられていることによって叶うことはなかった。 「…なぁ、ほんまに良かったん…?」 そう言いながら、白石が俺の中からずるりと雄を引き抜いた。栓がなくなったことにより溢れ出す白獨は俺の尻へ流れ、ベッドのシーツを汚す。抑えつけられていた事により痛む両手首を擦りながら、俺はそれを肌で感じた。 「何が?」 「やって、お前には財前が」 「えぇの」 確かに、俺と財前は付き合っている。別に喧嘩をしたとか言う訳じゃない。むしろ、言い争いになったことすらない。 財前は縛り付けるのが嫌なのか俺が何をしても怒らなかったし、文句を言わなかった。だが俺はそれが嫌だった。キスの仕方もエッチの仕方も全部嫌だった。 彼は、まるで俺が女であるかのように扱うのだ。 「…白石は、意外と性急やな」 「薬盛っといて何やねん…」 「堪忍な…でも、好きなんやろ?俺んこと」 「…残念なことに、な」 はは、と悲しげに笑う白石を見て、俺は心の中で口端を上げた。 今、白石は俺しか見ていない。財前とは違う。あいつは、俺を通して他の奴を見ている。他の奴を想っている。俺じゃない、誰かを。白石は違う。俺だけを愛してくれる。 幸せか、不幸か。そう聞かれたら、俺は多分幸せな部類に入るんだろう。 愛があるかは分からないけれど、優しい恋人。恋愛対象だと言って、引っ付いて来てくれる大事な親友。 「謙也、」 あぁ、俺はこの居心地の良い泥沼から抜け出せない しあわせなのにもっとほしいの だって、どっちも愛しているから 10/10/23 |