恋の仕方を教えてほしい




―例えるなら、金ちゃんは太陽だ。
キラキラと眩しく輝く君は太陽。


そして俺は月。
太陽がいないと輝くことが出来ない、月。


俺達には、そんな関係がお似合いやった―




「なぁ光、恋って何なん?」
「は…?」


それは遠山のこの一言から始まった。


「クラスの奴がな?彼女出来たー、て自慢してくんねん」
「へぇ」
「でもワイ、恋なんしたことあらへんし、自慢されてもどないしたらええのか分からん。なぁ、恋って何なん?」


財前の部屋のベッドの上で俯せに寝そべり、遠山は心底分からない、と言った様に財前に尋ねた。
一方財前はと言うと、このゴンタクレも恋愛に興味が出て来たんか…、としみじみとそう思っていた。


「恋、なぁ…」


財前は今まで弄っていたパソコンから離れ、遠山の寝そべっている自分のベッドに座った。
遠山はそれを見て起き上がり、財前の隣に胡座をかいて座る。


「恋はな、相手のことを考えるとここがぎゅーっ、てしたりするんや」
「胸が?」
「せやで」


財前は自分の左胸側の服をぎゅっと掴み、遠山に教える。遠山もそれを真似するが、首を傾げるばかりだ。


「えーっ!そんなん信じられへん!」
「金ちゃんにも何時か分かる時が来るで」
「やって、胸が痛くなるんやろ?病気やん!」


確かに、恋の病という言葉はあるが実際に病気である訳ではない。
しかし遠山は自分がそうなったことがないので、よく分からないようだ。


「やから、何時か分かるって」
「ワイ、今分かりたいねん!」
「やったら好きな奴でも作ったらええやん」
「そんなんどうやったらええねん!」


こればかりは財前にはどうすることも出来ない。
恋愛が何か、と聞かれれば答えられるが、今遠山は好きな奴の作り方を尋ねているのだ。
それは遠山次第。財前はどう答えるべきか悩んでいた。


「…彼女、とか作れば好きになるんちゃうか?」
「彼女?」
「おん」


しばらく悩んだ後、財前は苦し紛れにそう言った。

財前は遠山が意外とモテることを知っていた。
一年でありながらテニスの名門、四天宝寺でレギュラーを張り、顔も悪くないしあと一年もしたら身長だって大きくなっているだろう。

ある意味、有望株。

それに中学時代は恋愛等に興味が出やすい時期だ。
遠山が告白すれば大体の女子はOKするだろう。それから好きになれば良い。
財前はそう考えたのだ。



しかし遠山はゴンタクレ。
人が考えもしないことをやってのける。
それが遠山だった。


「やったら、光がワイの彼女になってや!」
「…………は?」


財前は一瞬時が止まったように感じた。


今、金ちゃんは何て言うた?


「………俺、男」
「そんなん知っとるで?風呂一緒に入ったやん!」
「…………金ちゃん、今自分が何言うたか分かっとる?」
「光に、ワイの彼女になってって言うた」


……聞き間違いや無かった


財前は頭を抱えた。
遠山は財前の後輩であり幼なじみ。そんな彼をどうやって恋愛対象として見たら良いのか。
いや、その前に彼は男だ。自分と同性の男。

財前はちらりと遠山を見る。そこには目をキラキラさせた遠山がいた。


これは完璧に期待している。
もう何を言っても無駄だ、と財前は悟った。


「……一週間」
「へっ?」
「一週間なら、付き合うてもええで」
「ホンマか?!おおきに光っ!」


遠山は勢い良く財前に飛び付くと、強く抱きしめた。


それは友達の様な恋人の様な、

それでも二人には大きな一歩だった。



10/06/27

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