ボス!4



「財前…どないしよ、ワイ…」
「何や遠山どないしたん?」
「ワイ…白石には勝たれへん…!」


遠山が泣きそうな顔で俺の教室に来た。そして口を開くなりこれだ。…一体何だと言うのか。


「勝たれへんて何やねん」
「やって、白石はワイを殺そうとすんねん…!」
「…あー、」


確かに、あの人はやばそうだ。無駄の無いパーフェクトな喧嘩…それが白石先輩の喧嘩方法。自分に怪我を残さず、相手を完膚無きまでに叩き潰す。
特別得意な喧嘩スタイルは無いが、どんな喧嘩にもついて行ける。一番厄介なのは間違いなくこの人だ。

やけど、いくら白石先輩とは言え遠山の喧嘩にはついていけまい…そう思っとったんやけど、まさかの遠山の戦意喪失。


「…何があったん?」
「し、白石な?毒手持ってんねん…」
「……………は?」
「白石は毒手使てワイを殺そうとしてんねん!ワイ、まだ死にとうない!」
「…………………」


やられた。何処で入手したんやこんな情報。
遠山は思い込みが人一倍激しい。純真無垢で何でもかんでも信じる。疑うことを知らない。
そして人一倍融通が聞かず、誤解を解くのが難しい。


白石先輩は喧嘩を回避して遠山を戦線離脱させるつもりや。


「…分かった。ほな遠山は忍足先輩と喧嘩しぃ。俺が白石先輩引き受けたる」
「そ、そんなんしたら、財前が死んでまうやん!」
「大丈夫や、俺は毒手効かんから。身体に解毒剤仕込んでんねん」
「そうなん?!財前て凄いんやなぁ!」
「これぐらいせんと西軍ボス勤まらんわ。…じゃあ、明日喧嘩開始でええよな?」
「ワイはいつでもええでー!」
「なら小春先輩んとこ言いに行かなあかんな。ほら、遠山も来るんやろ?」
「おん!明日楽しみやなー財前!」
「…そうやな」


楽しみなんはお前だけやっちゅーねん。こっちは白石先輩相手にすんねんで?


(下手したらホンマに死にそうや…)


そしたら遠山に全部任せなあかんねんな。

決戦は、明日




10/06/25

- 18 -