その想い、だだもれです


生まれてきて早17年。今が私の人生始まって以来の最高潮であると、自信を持って言える。だって、毎日がキラキラと輝いている。楽しくて仕方がない。これぞ青春。華の女子高生。――その素晴らしい日々の、原因とも言える存在は。


「今週のスガくんもめっっっっちゃくちゃ素敵だった!!!!」


心の中に溜めこんだ想いを、ぶちまけるように声を上げる。だん、と手を机に突いた私を呆れたように向かい側の友人は笑った。
休日。ちょっと遠出した町の、ファミレスに友人と二人。私たちはよくここに来る。ドリンクバー260円でひたすら、居座ってお喋りしてするのだ。店員さんにとっては良い迷惑である。


「本当になまえは菅原のこと好きだね〜」

「だってだって、かっこいいんだもん」

「まあ、確かに顔は整ってるけどさ。優しすぎるってか…なまえが言うほどじゃねーべ」


彼女の言葉に、私は頬を膨らませる。


「いいもん…スガくんの良さは私が分かってればそれでいいし…」


私のスガくん狂は今日まったことではない。
クラスメイトのスガくん――菅原孝支くんに、私はぞっこんである。男子バレー部の副主将、ポジションはセッター。温和な性格。優しく爽やかな笑顔。時々お茶目な行動。その全てが私を魅了してやまないのだ。何度考えてもスガくん、かっこいい。いや、本当はクラスメイトなだけで友達とは言い難い関係だ。そこまでお近づきになれていない。だからスガくんとお呼びするのもおこがましいのだが。


「毎週のように菅原の話するけど、飽きないよね」

「うん、だってね、昨日なんて日直がぶちまけたプリント一緒に集めてあげてたり、重い荷物持ったクラスメイトを手伝ってあげてたり、後輩らしき人と一緒に居る時なんてキリッとした顔で、でもお茶目で爽やかな笑みで!!!!ああああ言葉にしきれない!もういっそ神々しい!スガくん素敵!!!!」

「そんなに言うのなら、声掛けるなり告白するなりすればいいのに」

「ここここ告白?!!無理!絶対無理!声掛けるのでさえ無理なのに!あの天使の側に行くことなんて私には難易度高すぎ!見てるだけで十分なの!それだけで幸せなの!!!」

「はいはい。っと、私ドリンク取ってくるけどなまえお代りる?」

「お願いします!」


友人は、私の分のグラスを手にすると立ちあがる。彼女は視線をふっと横に逸らすと、一瞬目を見開いた。


「どうかした?」

「え、あ、…いや、別に?」


新しくジュースをつぎに行った友人は、平然とした顔で座る。それから、ちょっと改まった顔で聞いた。


「なまえって、何でそんなにスガのこと好きなんだっけ」

「何でって…まあ理由はあるけどね。でもそれは、スガくんがとっても素敵で、全てが私にとってドストライクっていうので十分説明がつくと思う。というか、私の語彙力で説明しきれるわけないべ」

「…そんなに好きなのね」

「そんなに好きです。絶対言えないけど」


この想いを、本人には知られたくはないと思う。困らせるだけだ。言う勇気もないし、この友達以外に知られるのも無理だ。だから学校では、スガくんの話はしない。だからこうして、町のファミレスに来た時にくらいしか、スガくんの話はしないのだった。
うんうん、と聞いていた友達はちらっと腕時計を見る。


「なるほどね〜…と、もうこんな時間だわ」

「うん、帰ろ」


立ちあがった瞬間、視界の端に、見覚えのある柔らかな髪が映った。ちょとした衝立があって気付かなかったけど、隣は男の子の三人組だったようである。その中の一人は、何故か深く俯いていた。その彼の、灰色がかった、癖のある髪。


「!!??」


見覚えあるなんてものではない。見間違えようがない。愛しのスガくんの髪である。
動きを止めた私の横で、友人は軽く手を上げて声を掛けた。


「…あ〜、澤村じゃーん。奇遇だね。何?バレー部男子三年でファミレス?」

「ま、まぁな。参考書買いに来たついでに、旭の勉強を俺とスガで見てやろうってって…な、スガ」


良く見たら、それは澤村君と東峰くん、そしてスガくんだった。けれどもスガくんは、答えない。彼は黙ったまま俯く。それから、恐る恐るちらりと私を見上げた。――とっても、とっても真っ赤な顔をして。

硬直したままの私は、その彼の態度にようやく状況が掴めてきた。あれだ。きっと、ずっと彼らは私たちの横に席に居たのだ。気付いていないの私だけだったんだろう。そう、つまり。

――聞かれてた。あの、恥ずかしいスガくん素晴らしい談義を、本人に。

顔の赤いスガくんに比例するように、きっと私の顔は徐々に真っ青になっていると思う。視界が、暗転する。全ての音が、遠ざかる。

――最悪、だ。

私の輝かしい青春が、ガラガラと崩れ落ちる音がした。



140727
次の日からお互いに色々意識しちゃえばいい。
友人が提供してくれたネタをほぼそのまま書き起こしただけ。ありがとうございました。照れたスガさんみたいですください。



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -