大晦日 「な、なんとか出来た…」 朝から作り始めたお節料理は、昼過ぎに完成。疲れを振り切るように伸びをした所でスパナが顔を出した。 「できたのか?」 「まぁ一応ね」 料理の詰まった重箱を指すと、スパナは目をキラキラさせて蓋を開ける。 「……すごい!」 お節ごときに感動も何もないと思うのだけれど。しかしスパナはきっちり詰まった(案外頑張ったんですよ)食材をまるで宝物でも見るように見詰める。 「あ、まだ食べちゃだめだからね?元旦に食べるんだから」 私が言うと、スパナは残念そうに蓋を閉める。けれどお節料理がお気に召したようで、ご機嫌だ。 「明日が楽しみだ」 わくわくするスパナだが、私はあることを思いだして声を上げた。 「スパナ、大掃除はした?」 「……」 「私、片付けるように言わなかったっけ」 「……」 「ちょ、スパナ!」 回れ右で厨房を去ろうとするスパナの腕を掴むと、彼はばつが悪そうな表情だった。 「さては…やってないな」 「か、片付けなくてもいいんだ」 「足の踏み場もろくにないでしょ」 「動かしたら、どこに何があるかわかんなく、なる」 言い訳のようなスパナの言葉を無視して、私は厨房を後にすると彼の職場兼寝室のドアを開けた。 「あー、やっぱり汚い」 「…うるさい」 「これじゃ、新年迎えられないよ?」 「…」 これは掃除しがいありそうだ、と腕まくりした私の後ろで、スパナは何故か溜め息をついた。 大掃除やらお節料理やら、なんだかんだと年の瀬は忙しいのです(12/31) (正一は大掃除の話なんてしてなかったし、ウチは人に部屋荒らされるのは嫌だけど、彼女が片付けてくれるのなら、それはそれでいいと何故か思った) 081231 正月カウントダウン2 |