日本の年越し




「クロマメ」

「…」

「タヅクリ」

「…」

「ダテマキ卵」

「…」

「クリキントン」

「…もうわかった!わかったからちょっと落ち着いて!」


降参!
と、わたしが軽く両手を挙げると、チラシを掴んで攻めよってきていたスパナは渋々動きを止めた。


「お節でしょ!?お節作ればいいんでしょ!」

「オゾウニも。あとカガミモチ」

「鏡餅はまだ食べちゃだめなの! あー、なんでスパナは妙な知識ばっか持ってるかなぁ」


私が溜め息を吐くと「常識だろう」とスパナは続けた。


「むしろウチは、ジャッポネーゼなのにお節なしで正月迎えようとか思ってたあんたが信じられない。」

「や、だって今年は実家帰んないし。一人なのにお節とか、かなり面倒くさいよ?」

「面倒くさいも何も、お節っていうのは年の始めに神様にするお供えと同じ意味のものだろ。それは縁起を担ぐ意味でとても重要な…」

「…スパナ詳しいね」

「――…なんでウチが知っててあんたが知らないんだ」


呆れたように呟くスパナの手にあるチラシには、それは綺麗に飾られたお節料理の写真があった。年の瀬に配られる、デパ地下とかのあれである。


「だから、いいじゃん。デパ地下で勝ってくるだけでさ。手作りな必要あるの?」


するとスパナは大きく目を見開いて(うわ、なんだなんだ)信じられないと言う。


「デパ地下でお節買うなんて言語道断!そんなんじゃヤマトナデシコにはなれないぞ!」

「や、大和撫子!?(え、我が家のお節だって出来合い詰めるだけだよ!?)」


どうやら彼は日本人女性はみんな大和撫子になるもんだと思ってるらしい。本当、全くどこから得た知識なんだろう。


「私ね、親の手伝いとかしかしたことないから、大したもの作れないよ…?」


それでもいいなら明日、朝一番で作り始めるけど。自信なく問い掛けると、スパナは僅かに表情を緩ませた。


「構わない。ウチは、あんたとお節が食べれれば、それだけでいい」




日本の年越しは外国人にとっては興味の対象らしいです。(12/30)


(そう言ってくれるけどさ、実際スパナって私を何だと思ってるんだろう。
でもきっと深く考えてないんだろうな。お節料理ひとつであんなに喜んでるんだから)





081230
正月カウントダウンでした。



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