希望 「ねえもしも、もしもだけどさぁ」 姉は突然、俺に話を振った。 「私がイタリアで何か事件に巻き込まれちゃって、マフィアに入ることになっちゃったりしたら、どーする」 「はあ、何それ。あり得ねえだろ」 「ちょっと、例え話くらいいいじゃない!」 「ないない。姉貴どんくさいし、そんなんすぐに殺されて終わるよ」 「なっ…まあ、否定できないけどさあ…」 「で、何。姉貴はマフィアに入りたいの」 「そんなわけないでしょうが」 もしもの話。 あり得ない話。 それは、仮定にすぎない話。 俺は姉貴の顔を眺め、思いを巡らせる。 「そうだな…もし姉貴がマフィアに入ったって言ったら、一言だけ言わせてもらう」 そして、満面の笑みで言い放つ。 「"冗談!"」 110422 |