*

沖田は、土方の問いに口角を上げた。


「やっぱり、思った通りでさァ」

「クロか」

「真っ黒ですねィ。ついでに、鼠がこそこそ嗅ぎ回っていやがる」


自分たちが思っていた通りにこうも事が運ぶと、なんだか背筋がぞっとする思いだ。それ程今回の敵はでかく、綿密に計画した作戦だった。作戦の内容は、近藤も知らない。土方と沖田、山崎だけで動いている。


「…怪我は」

「大したことありやせん。それよりも――鼠は上手く、餌にかかってくれるかねェ」


餌、と言われて土方は苦い顔をした。餌を使い、危険を増す今回の作戦は実はあまり乗り気ではない。


「抜かりはない。そっちは山崎に頼んでいる。…だが本当に大丈夫か?」


今回の発案者は、沖田だった。他に方法が無く、成り行き上許可したが、リスクの高い作戦に不安も募るばかりなのだ。

(良い機会だ、もう少し気をつけるよう強く言っておくか)

土方が口を開きかけたその時、部屋の戸が開かれ、間の抜けた声が響いた。


「副長〜お茶持ってきましたぁ」


名字名前である。後ろに山崎も見える。何とタイミングの悪い、と舌打ち仕掛けた土方の前で、沖田はほんの少し名字と声を交わすと立ち上がる。もう自室へ引き上げるつもりだろう。

(あいつ…逃げやがった。こちらは心配してるっていうのに、総悟相手じゃ埒があかねぇ)

立ち上がる直前の沖田は、土方の不安をよそに、唇に愉快げな笑みを浮かべていた。



090818




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